最近、WSJ.でビリーが子どもの頃から大切にしているものをあげていたのだが、その中の一番が「ミニカー」だった。これほど彼女を象徴するエピソードもない。幼少の頃から好きなものを好きでい続け、17歳になっても好きだと言えること。しかもそれが、ステレオタイプな見方からすればティーンエイジャーの女の子にとっては珍しい「車」だということ。その、何ものにも縛られない自由が、楽曲に、スタイルに、他人に見せる生き方に直結しているという奇跡。それがビリー・アイリッシュというアーティストの凄さである。
他者からの目線や評価においていくつものスタンダードが存在しそれが公に晒されもし、一見シームレスだがあちこちが分断されている10年代において、彼女のように、彼女の楽曲のように、屈託なくまっとうであることがいかに難しいか。世代に拘らず私たちの多くがそれを知り、諦めてもいる。彼女がティーンエイジャーのカリスマに止まらないのは、そんな風に10年代を生きる者たちに、人間本来の「まっとうさ」を気づかせるからだと思う。(羽鳥麻美)
発売中のrockin'on7月号では、アルバム・デビューを受けて世界的にブレイクする直前、母親と兄と暮らすLAの自宅で行なわれたインタビューを掲載しています。
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プリンスが表紙です。