2018年、オアシス解散から10年を前にノエルとリアムが導き出したそれぞれの答え

2018年、オアシス解散から10年を前にノエルとリアムが導き出したそれぞれの答え

ノエル・ギャラガーリアム・ギャラガーがそれぞれに来日を果たした2018年は、2人のキャリアにおいても、兄弟を迎えた日本のファンにとっても、そして「オアシス後」を総括する意味においても、極めてエポックメイキングな年だったと改めて思う。

何しろノエル(8月サマソニ)とリアム(9月単独)が1か月以内に立て続けて来日し、日本のファンは1か月の間に“Wonderwall”と“Whatever”の兄バージョンと弟バージョンをそれぞれ目撃することになったのだ。そしてその両バージョンを目撃した人は、兄弟のパフォーマンスの凄まじいギャップというか、現在の彼らのオアシス曲の解釈の違いに驚いたんじゃないだろうか。


歌をほとんどオーディエンスの合唱に任せ、オアシス曲を往年のクラシック・ソングのような距離感でプレイしたノエル。かたや全盛期の張りと力強さを取り戻した声で、万能感漲らせながらオアシス曲を歌ったリアム。新作『フー・ビルト・ザ・ムーン』のエレクトロニックでハイファイなダンス・ロック・サウンドの中でオアシス曲がセピア色を帯びていたノエルのパフォーマンスに対し、セットリストの過半を占めたオアシス曲が、ソロ・デビュー・アルバム『アズ・ユー・ワー』の楽曲と一体化していったリアムのパフォーマンス。

そう、全てが対照的だったのだ。自分が作った曲であるオアシスを当たり前に肯定しながら、そこから自分を解放していこうとしたノエル。兄貴の曲であるオアシスに屈折した思いを抱きながら、自分自身でありたいと願ったリアム。そんな兄弟のソロに対するモチベーションと出発点の違いが彼らの対照的なパフォーマンスの源にはあり、オアシスの栄光をついに完結させた2018年のノエルと、オアシスのスピリットをついに取り戻した2018年のリアムは、それぞれにそれぞれの正解を導き出したのだと思う。


オアシスの解散から10年の節目の年となる2019年を前に、兄弟がついに彼らのいるべき場所、しっくりくる場所に「ひとり」で立てたことは、オアシスの、そして彼らひとりひとりのダイハードなファンとして本当に嬉しいことだったし、やっとここまで来たという感慨を覚えずにはいられないものだったのだ。

ちなみに2019年は『ディフィニトリー・メイビー』のリリース25周年というタイミングでもあり、また再結成ギグがどうこうといった噂が加熱しそうな年でもあるが、それは彼らが元オアシスであり、血を分けた兄弟であり続けるかぎり避けては通れない年中行事みたいなものなので受け止めるとして、2019年の最大の事案はもちろん、ノエル&リアムが揃ってソロ新作のリリースを予定していることだ。

深夜の連続ツイートで「人生を変える新しい音楽」たる新作を熱くアピールしたリアムも、70年代ディスコだなんだと言いつつも、やはり「世界の始まりのような音楽になる」と語ったノエルも、共に見つめているのは未来なのだから。(粉川しの)

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