the band apart、トリビュート盤リリース記念! 盟友・FRONTIER BACKYARD、ASPARAGUSを迎えた座談会インタビュー!


先輩として、僕らのことを理解してくれようとしてるんですよね(the band apart・荒井)


――お互い会うのは全然久しぶりじゃないですよね?

原昌和(the band apart/B) そうですね。このあいだもフェスで物販が隣だったんですよ。その時、僕らの到着が遅れてたら、田上(修太郎/FRONTIER BACKYARD/Vo・Syn)さん(以下、TGMX)が、「もうちょっと時間がかかりますよー」って仕切ってくれてたんです。貼り紙を作ってくれて(笑)。

TGMX すごいお客さんが来てたからね。

荒井岳史(the band apart/Vo・G) ありがとうございます!

TGMX 友だちですから!

――今回はバンアパのトリビュートアルバム『tribute to the band apart』に参加している盟友が集結したということですけど。それぞれ本当に付き合いは長いですよね。

原直央 (ASPARAGUS/B) もともとASPARAGUSを組む前に、(渡邊)忍(ASPARAGUS/Vo・G)がやってたCAPTAIN HEDGE HOGが、the band apartと仲が良くて。ASPARAGUSができた時に、バンアパがいちばん最初にライブに誘ってくれたんです。(バンアパのほうが)年齢は下なんですけど、バンド歴は上で。あいつらがかっこいいことをやってるんだから、俺らもがんばらなきゃなって刺激をもらってます。俺たちの機材車が盗まれた時には、お古のハイエースをくれたこともあったんですよ。ちょうどバンアパが機材車を乗り換える時期だったんですけど、たぶん下取りに出したら、それなりに値段がつくであろうハイエースを。あれから俺ら、どれぐらい乗ってる?

一瀬正和(ASPARAGUS/Dr) 20万キロぐらいでもらって、今ちょうど40万ぐらい。

原(直) 40万!

TGMX そんな走るんだねえ。

原(直) その時にバンアパが新しく買った機材車よりも、もらった機材車のほうが長く乗れるようにがんばろうって言ってますね。感謝しても、感謝しきれないバンドです。言われればなんでもします。

一瀬 そうね、なんでもするよね(笑)。

――フロンティアは、バンアパ20周年ということで思い出すエピソードはありますか?

TGMX 最初にバンアパに会ったのは、もらったデモを聴いた時なんですけど。ボサノバのバンドっていう噂だったんですよ。でも、ボサノバのバンドにしては激しいなって。

全員 あはははは!

TGMX たしかに1曲目ボッサ調で始まる曲ではあったんですけど。そのデモがすごく良くて、僕と(福田"TDC")忠章(FRONTIER BACKYARD/Dr・backing vocals)くんと、僕らが前やってたSCAFULL KINGっていうバンドのメンバーと一緒にライブを観に行って。すごく良かったんですよね。で、次の日にラーメン屋に行ったら、そこの店員が「昨日、バンアパに行った」って話してて。

木暮栄一(the band apart/Dr) へえ~。

TGMX 「もう人気があるんだ!」と思って。まだリリースもしてない時ですよ。それで、友だちになりたいと思って、新宿の居酒屋に無理矢理誘ったっていう。もう拉致ですよ(笑)。

木暮 ありましたね(笑)。

荒井 あれ、めちゃくちゃ喜んでたんですよ。

川崎亘一(the band apart/G) だけど、待たせちゃったんですよね。当時の(新宿)アンチノックのブッキングマネージャーに「今日のライブは……」っていう話をされてて。

TGMX 反省会みたいなやつ?

川崎 それがあまりにも長いから、「今日、SCAFULL KINGのメンバーが観に来てくれてて、今、居酒屋で待ってるんですよ」って言ったら、「早く行けよ! バカ!」って言われて。

TGMX で、仲良くなったのが始まりですね。そこから、アルバムをリリースするごとに必ずツアーに誘ってくれるような関係が続いてますね。

荒井 その飲み会のことはすごく覚えてます。とにかく舞い上がってた。メンバーにスキャフルの音源をテープとかでもらって聴いてて、「うわ、すごい!」ってなってたから。ただのファンですよね(笑)。

――今までたくさんのバンドに出会ってきたと思いますけど、バンアパ、アスパラ、フロンティアの結びつきって本当に強いですよね。どうして、そこまで仲がいいんですか?

TGMX 単純に好きだから、かな。

荒井 先輩として、僕らのことを理解してくれようとしてるんですよね。どっちかと言うと、僕らはそんなに社交的なバンドだったとは思えないから。

木暮 あんまり仲良くならないよね。

荒井 そういうのを受け入れてくれた先輩なんです。

一瀬 僕らもそうですけど、(バンアパみたいに)20年間メンバーが変わらずに続いてるバンドって、ほとんどいないと思うんですよ。近くで言うと、BRAHMANぐらい。やってることもかっこいいし、出会った時と変わらないんですよね。「飾らない」って言うと、ざっくりしちゃうけど、そういうところが付き合いやすい人たちなんです。

スタッフ 忍さん、来ました~!

渡邊忍(ASPARAGUS/Vo・G) すみませーん!

一瀬 来た来た(笑)。

渡邊 濃厚な話をしてたの?

一瀬 嘘しか話してない(笑)。

――(笑)。20周年を迎えたバンアパとの思い出話を聞いてました。

渡邊 20年間で世の中は進化してますからね。ストリーミングもない時には、何十枚入りとかのCDに全部焼いて手渡しで配ってた。それぐらいからの長い付き合いです。

一瀬 (遅れてきた分を)一気に巻き返すなあ(笑)。

全員 あはははは!


最終的には「バンアパ、弾いてみた」の映像まで見ました(笑)(FRONTIER BACKYARD・TGMX)


――バンアパとしては、今回20周年のタイミングでトリビュートを出すことにしたのは、どういう経緯だったんですか?

木暮 自分ら発信というよりは、ポニーキャニオンのスタッフが「どうですか?」って言ってくれて。ぜひ、お願いしますっていう感じだったと思います。

渡邊 トリビュートされるほうは照れちゃうよね。

木暮 最初はすげえ恥ずかしかったですよ。

渡邊 そういう性格だと思うんですよね。でも、誰かがお膳立てをしてくれれば、本当はうれしいんですよ。……ね?

荒井・木暮 (笑)。

川崎 それはそう(笑)。

荒井 こういう機会でもないと、この先ないだろうなということで、謹んでというか、ありがとうございますという感じでやってもらいました。

――誰に何をカバーしてもらうかは、どうやって決めたんですか?

木暮 最初にスタッフから、こんな感じでどうですか?っていうリストをもらって。そのなかにアスパラとフロンティア、KEYTALKとかも入ってて。自分らで、ここに加えたのって、(坂本)真綾ちゃんぐらい。面識がある人がよかったんです。カシオペアとか好きですけど、あんまり面識はないので……。

TGMX それ、聴きてえ(笑)。

一瀬 面識なさすぎだろ!

木暮 昔、イベントに呼ぼうとしたんですよ。

TGMX へぇ~。

――何をカバーしてもらうか、リクエストしたんですか?

木暮 全然ないですね。

――じゃあ、アスパラとフロンティアはトリビュートのオファーをもらってから、曲を決めるのに迷いませんでしたか?

原(直) 僕らはライブの現場でトリビュートの話をもらって、「ああ、やるやる!」ってなったんですけど。その時に“Moonlight Stepper”がパッと浮かんだんです。好きな曲はいっぱいあるんですけど、思い浮かんだのを口に出したら、そのまま決まったっていう。

一瀬 アスパラでやるのをイメージしやすそうというか。ポップ加減とか、80'sっぽいフレーズとか、直央がカバーしたら面白そうだなって。あとは、どの曲をやるかは早いもの勝ちだと思ったから、それが通ればいいなと思いましたね。

渡邊 歌い出しの「ノノノ」をもっと繰り返したいなと思ったんですよ(笑)。あんまりやれなかったのが残念でした。

全員 あはははは!

――“Moonlight Stepper”をカバーしてみて発見できたことってありました?

渡邊 マジ、イケてるなと思いました(笑)。

一瀬 間違いない(笑)。

原(直) 改めてカバーすると、また聴き方が変わるじゃないですか。そうすると、「あ、こんなところまで凝ってるんだな」っていうのを気づくんですよね。そうなると、生半可な気持ちでトリビュートに参加しちゃいけないなと思って。勉強になりました。

荒井 (カバーを聴くと)ちゃんとアスパラの曲に聴こえるのがすごいんですよね。忍さん、「ノノノ」はいっぱい言えてなかったけど、「ポップ」はたくさん言ってたんですよ。

渡邊 ああ、「ポップ」は言った。

荒井 ポップが増し増しで来てましたよね。で、イントロが始まった瞬間からですけど、塾長(一瀬)のドラムはすぐにわかるし。サビはもう「アスパラだな、これ」っていう。ビート感とかフレーズとかファンだけがわかる小粋な入れ方をしてるから。僕らの曲を使ってるのに、アスパラの曲にするっていうのは技術だなと思いました。

――フロンティアはどうですか? 選んだのは“higher”ですね。

福田 もうバンアパの曲として完成されてるじゃないですか。これをどうやって崩すのかっていうのは、難しかったです。

――どういうふうに曲を決めたんですか?

TGMX まず好きな曲を10曲ぐらいに絞って。やれそうな曲ですよね。バンアパの曲は難しいじゃないですか。僕らは、ギター、ベースがいないから、それでも成り立つ曲に絞って。で、さっきも話が出たけど、早い者順だろうなと思ったので、早く決めないといけない。実は“Moonlight Stepper”もいいなと思ってたんですよ。でも、アスパラがやるって聞いたから、早速ダメになって。決めるまでは大変でしたね。で、実際にやるのも、今までたくさんトリビュートに参加させてもらったことはあるんですけど、いちばん大変でした。“higher”の間奏に、“Can’t remember”のサビを入れたんですけど、まさか誰もやらないだろうなと思ったら、ストレイテナーが選んでましたね。

荒井 フロンティアにも“higher”っていう(自分たちの)曲があるにも関わらず、この曲を選んでくれたんですね。

TGMX 僕らの“higher”は、バンアパの“higher”からパクったんです(笑)。

荒井 いやいやいや(笑)。

TGMX 本当です!

荒井 “higher”なんて名前はいっぱいありますから(笑)。

TGMX バンアパの曲は本当に難しいよ。何回聴いてもわからないし、ライブバージョンを見てもわからないから、最終的には「バンアパ、弾いてみた」の映像まで見ました(笑)。

全員 あははは!

TGMX それでもコードとかあんまりわからないですからね。

木暮 参加してくれた人のなかには、たとえば、イチさん(LOW IQ 01)とかは、パラデータをくれっていうお願いがあって。

TGMX ほしいな、それ。(LOW IQ 01がカバーした)“beautiful vanity”も候補だったけど、コード進行が無理でやめちゃったんですよね。

福田 バンアパは難しい。

TGMX こういう難しいことをサラッとやってるのが、すごいんだなと思いましたね。

――バンアパ側としては、あがってきた曲を聴いてどう思いましたか?

原(昌) さっきと同じになっちゃうけど、自分たちの曲じゃないみたいですよね。これから同じ曲をやるのにも、新たな気持ちでできる感じはします。

一瀬 アスパラは、バンアパをカバーしながら、自分たちが過去にやってきたことを演奏のなかに入れたイメージがあるんですよ。

川崎 セルフオマージュみたいな感じなんだ?

一瀬 アスパラを古くから知ってくれてる人には響いてくれる感じで。バンアパにASPARAGUSを落とし込む。バンアパを通して、ノスタルジックなASPARAGUSの感じが見えたらいいなと思ったので、気づいてもらえたらうれしいです。日常的にバンアパのフレーズを弾いてたりするから、そのノリをそのまま入れたとこがありますね。

――話を聞いてると、「難しい、難しい」と言いながらも、仕事の範疇を越えて、かなり楽しみながらカバーをしたっていう感じですよね。

一瀬 うん、すごい楽しかった。

TGMX 自分たちの音源を録るよりも、ちゃんと演奏をやらなきゃって。

渡邊 そうそう(笑)。大変なところもあるんだけど。人様のものだから。

一瀬 OKテイクのハードルが高かったかなって感じですね。自分たちの曲で、自分たちの演奏だと、等身大だし、こんなもんだっていうのはあるけど、バンアパだからっていうのはあったような気がしますね。それはフロンティア兄さんも一緒かもしれないけど。

TGMX すげえ時間かかったよ。

一瀬 できればもうやりたくない、今回だけにしてほしい(笑)。

全員 あはははは!

TGMX バンアパは曲がいっぱいあるから、「2」も出すよ。

一瀬 40周年で!?

TGMX 夢があるなあ。

荒井 今度は逆にお願いします。こっちがトリビュートさせてもらえれば。

俺たちはバカの最後の世代ですね(笑)(ASPARAGUS・渡邊)


――トリビュートに入ってる他のアーティストのカバーに関しては、どう思いましたか?KEYTALK、ゲスの極み乙女。、tricotとか、実力のある若手も参加してますよね。

川崎 tricotとは付き合いが古いんですけど、選んだ曲が結構マニアックで(“泳ぐ針”)。このあいだ、ドラマーのやつと、たまたまフェスのバックヤードで会って。「なんで、あんなマニアックな曲にしたの?」って聞いたら、「メンバー全員一致したのが、あの曲だったんですよ」って言ってたから、変なやつらだなと思いました(笑)。結構年は離れてるのに、こんなところまで聴いててくれてるんだと思いましたね。

荒井 KEYTALKは、一度、ライブに呼んでくれたんですよね。その時に、聴いてくれてたみたいな話をしてくれて。単純にそのことが嬉しいんですよ。僕もフェスの時に(小野)武正くんに会って、「好きな曲をやらせてもらって良かったです」って言われたんですけど、逆にこちらこそ「ありがとうございます」っていう気持ちです。

川崎 俺は八十八ヶ所巡礼にカバーをしてもらったのが嬉しかったですね。前、一緒にライブをやった時に、いきなり「今日、the band apartのカバーをやりますから」って言ってくれたのに、まったく何の曲なのかわからなくて。そういうのを期待して聴いたら、今回はどストレートなのがきたから、改めてかっこいいなって感動しました。

一瀬 何の曲かわからないって面白いね(笑)。

――若い世代のバンドが、これだけ熱量をもってカバーをしてるのを聴くと、やっぱりバンアパが今の世代に与えた影響は大きいなと思いますよね。若いバンドのインタビューをしてても、「バンアパの影響を受けてます」っていう声は多いですし。

渡邊 ふたりギターがいる、このスタイルを流行らせたのはバンアパですよ。

木暮 まあ、でも……俺、18 歳の時に、スキャフルと、キャプヘジ(CAPTAIN HEDGE HOG)とpopcatcherのデモテープを集めてたんです。(トリビュートに入ってるのは)全員そういう知ってるやつですからね。それが、すごい嬉しい。

一瀬 お前、popcatcherは嘘だろ?(popcatcherは、一瀬が所属していたバンド)

木暮 本当ですって(笑)。その頃、俺とまーちゃんで、かっこいいバンドがいるからって観に行って、「すごい! 面白い!」って言ってたから。

渡邊 そんなバンドが、今は若い子に影響を与えてるわけですよ。

木暮 ここ(フロンティアとアスパラ)を通って、ここ(バンアパ)を通って、また新しいバンドが出てきてるっていうのは面白いですよね。

――ええ。直接的にも、間接的にも、フロンティア、アスパラ、バンアパの音楽が、確実に新しい世代に受け継がれていく感じがしますよね。

TGMX 印税がほしいですね。

――若手に「影響を受けてます」って言われたら、お金が入る仕組み(笑)。

TGMX 影響印税(笑)。

全員 あはははは!

一瀬 やっぱりバンアパは、ひとつの時代を作ったっていうと変かもしれないけど、そういう存在だと思います。「バンアパ以降」っていう言い方をしますよね。フォーマットなのか、アレンジの仕方なのか、うまく説明はできないけど。こういうスタイルでロックをやってるバンドのなかでは、エポックメイキングだと思いますね。

――最近の日本のロックシーンに対して思うことはありますか? 若手の台頭を見て、自分たちが出てきた時とは「ここが違うな」とか。

原(昌) 考え方が全然違いますよね。まず俺らの時は配信がなかったし。そこで、どういうふうに音楽を盤にしていくかっていう考え方が全然違うんじゃないですかね。最初にストリーミングが始まった時は、すごく怖かったんですよ。

――音楽業界全体がビビッてましたよね。反対も多かったし。

原(昌) でも、結局、俺もApple Musicとか聴きまくっちゃってますからね。俺がいちばん使ってるんじゃないかってぐらい。だから、受け入れていくしかないんじゃないですかね。結局、若い子に粋がったって、ぶっ殺されますから(笑)。

渡邊 たしかに(笑)。

原(昌) どうやって若い子に媚びへつらっていくか。

全員 あははははは!

原(昌) 勉強しないといけないなと思いますね。

川崎 今は情報が入り過ぎるからね。昔は曲が先行してて、人が見えない状況で「すごいな」と思ってたけど、出会ったら、こういう感じの人なんだっていう……ざっくばらんで全然偉そうな感じじゃなくて……そういうのが好きだった。でも、今は最初から人が見えてるからね。

木暮 若い子たちのバンドは、僕らの時代よりも大変だと思いますよ。僕らは音楽だけで勝負をして、それ以外は何も考えてなくてよかったんですけど、今の子たちはいろいろな情報が簡単に手に入るから、バンドを始める前から、ライブのパフォーマンスとか見た目を、自分たちでプロデュースしてないといけない。どんなふうに売り出すかを最初から考えなきゃいけないぶん、それをちょっと変えたらブレたって言われたりとか。

原(昌) ああ。

木暮 俺らなんて、ずーっと少しずついろいろなスタイルに変わってるけど、関係ねえやって思ってやってきたから。最初から位置づけられてしまうぶん、いきなりガーンって人気が出たら、そこから逃れられないんですよね。そういう苦労があるのかなって感じますね。それこそ昔は音源を聴いて、ライブを見るまで、どんな人がやってるのかわからなかったりしたけど。今は、みんな名前も知ってるじゃないですか。

川崎 俺、最初は忍さん、ベースだと思ってましたもん。CAPTAIN HEDGE HOGの。たしかあの頃、角刈りだったじゃないですか。

渡邊 角刈り=ベースって、マジで偏見だぞ!

全員 あはははは!

一瀬 俺、持ってた(バンアパの)デモで、川崎が写真の真ん中で写ってたから、ボーカルだと思ってた。あと、テーブルの前に焼酎の瓶を置いてるアー写もあって。

原(直) 鍋みたいなのがあった。

一瀬 それ1枚しか情報がないから、「こんなバンドなの!?」と思って、ライブに行ったら全然違った。だから情報がないほうが面白いんですよ。

TGMX 面白い。どんなやつかわからないからね。

渡邊 今はそれぞれのツイッターとかSNSのアカウントを掘っていくと、全部バレちゃうからね。あと僕らの世代は、音楽って何もわからなくても、楽しいから闇雲にやってたんですよ。根性論とか熱さでいくこともできたけど、今は根性論だけではできない。パッションだけじゃダメなのかな?っていうのが見えちゃってるんですよね。そのぶん、みんなしっかりしてる。簡単に言えば、バカがいない。

TGMX ああ(笑)。

渡邊 おかしなやつはいるけど。「俺たちは、何でもいいぜ」っていうのは、あんまりいない気がするんですよ。俺たちはバカの最後の世代ですね(笑)。

――フェス文化も20年を経て定着しましたし、それこそ先輩たちが作ってくれた道筋があるから、そのうえでクレバーに闘えるバンドが増えてる感じはしますよね。

渡邊 それができなかった最後の世代なんですよ。バンアパなんて、アホばっかり(笑)。やり方が上手いなと思ったことはないですもん。不器用だと思いますよ。自分たちを良く見せる、売る才能はそんなにないというか、純朴なやつら。

一瀬 純朴なやつらって(笑)。

全員 あははははは!

渡邊 そこがみんな好きなのかもしれないですよね。


この2バンドがいてくれたから、僕らは20周年を迎えられたと思います(the band apart・川崎)


――たとえば、これからバンドを始める中高生たちに期待したいことってありますか? こういうことをやってくれたら面白いよね、みたいな。

一瀬 最近、上手くないといけないみたいなのがあるじゃないですか。クオリティが高い音楽が増えちゃってますよね。なのに、ドラムの生音を知らないこともある。あんなにバカみたいに上手い(打ち込みの)音源ばっかり聴いてたら、叩けるわけがないんですよ。それで実際にバンドを組んで、心が折れちゃう人が多いような気がして。英才教育で上手い人ばっかりになっちゃってるけど、バンドをやるって、そういうことじゃないから。バンドが好きだったら、下手でもいいから胸を張ってほしい。そんなに上手くなくたって、かっこいいことは表現できる。練習したり、ライブをやれば、だんだん上手くなるから。

原(昌) バンドって上手くやるっていう以前に、特殊部隊的な要素がありますよね。そういうところにバンドの面白さがある。

渡邊 (川崎は)俺よりも全然ギターを始めるのが遅かったけど、上手いからね。

川崎 いやいや(笑)。

渡邊 まあ、速さは俺のほうがハンパないですけど。

一瀬 何を競い合ってるんだよ(笑)

原(昌) 大事だよ。たとえば、「どんなギタリストなの?」って聞かれて、「うーん、繊細なこともできるし……」とか言われても、面白くないじゃないですか。でも、「ヤバいくらい速い」っていうほうがかっこいい。

木暮 あとは今の時代にバンドをやるなら、面白い友だちとやったほうが楽しいと思います。ひとりで何でもできるじゃないですか、今の人たちって。世界的にもバンドは減ってきてるし、みんなラッパーになりそうだけど。バンドをやるんだったら、同級生とか自分の周りにいる面白い人たちとやったほうがいいんじゃないかなって思いますね。自分の体験でしかないけど。

渡邊 俺らって同級生だったり、偶然の出会いに運命を感じて一緒にバンドをやってるけど、最近の子たちって、何個もバンドをやってるでしょ?

川崎 ああ、そうですね。

渡邊 股かけすぎなんですよ!

全員 あはははは!

渡邊 そうなると面白くないですよね。保険をかけてるみたいで。1個のバンドに命をかけて、おら、みたいな、そういうやつらが俺は好きです。高校もいけないようなバカなやつが、夢見てやったるぞっていうバンドが出てきてほしいですね。

川崎 苦言を呈してる(笑)。

渡邊 苦言じゃない!

一瀬 おじさんがモノ申したよ、横浜のヤンキーがモノ申した!

渡邊 やめよっ! もうやめよ、これ。

――(笑)。バンドっていうものに運命とかロマンを感じてるからこそ、ここまで続けてきた3バンドですからね。まだまだ音楽をやめる姿なんて全然想像できないし、これからも演奏できる限りはずっと続けていくんだろうなと思いますけど。

一瀬 わからないですよ、それは。やり続けなければいけないわけじゃないから。ただ、好きだからやってるだけだから。やりたくなくなったら、やめる。

渡邊 でもねえ、好きなんだよねえ(笑)

荒井 俺らはずーっと年下だから、続けられるのかなと思いますね。

木暮 それは本当に思う。先輩たちが本当にがんばってるから、何を甘いことを言ってるんだよって、自分たちに言い聞かせてる。

川崎 だから、どっちかが解散したら、うちらも危ないなって思うよね。

荒井 逆に何があっても続けてるっていうのを見てるから、自分たちも続けていけるなっていうのはありますよね。

――運命共同体じゃないですか、ある意味。

川崎 本当にこの2バンドがいてくれたから、僕らは20周年を迎えられたと思います。さっき田上さんは、僕らが走り出す前から、僕らのライブを観にきてくれてたって言ってたし、忍さんも、最初レーベルを決める時に、無理やりKOGA(RECORDS)に引きずり込もうとしてくれたし。ずっと支えてくれてる2バンドだなっていうのを、20周年で痛感しました。

――わかりました。素敵な締めの言葉をもらえたところで、座談会を終わります。

一瀬 20周年、おめでとうございます!


the band apart リリース・ライブ情報

トリビュートアルバム『tribute to the band apart』ダイジェスト

“ZION TOWN”(Music Video)

the band apartトリビュートアルバム『tribute to the band apart』発売中
PCCA-04705 ¥3,240円(税込)
《収録曲》
 01. fool proof / cinema staff
 02. Snowscape / KEYTALK
 03. higher / FRONTIER BACKYARD
 04. beautiful vanity / LOW IQ 01
 05. Can’t remember / ストレイテナー
 06. I love you Wasted Junks & Greens / ゲスの極み乙女。
 07. Moonlight Stepper / ASPARAGUS
 08. 明日を知らない / 坂本真綾
 09. 泳ぐ針 / tricot
 10. ピルグリム / 八十八ヶ所巡礼
 11. 禁断の宮殿 / 吉田一郎不可触世界
 12. 月と暁 / HUSKING BEE

the band apart / Mock Orange「Smooth Like Daniels Tour 2018」
2018年10月8日(月・祝) 東京・新代田LIVEHOUSE FEVER
2018年10月10日(水) 愛知・名古屋UPSET
2018年10月11日(木) 京都・LIVE HOUSE GATTACA

the band apart 20th anniversary「SMOOTH LIKE GREENSPIA 2018」
2018年10月13日(土) 大阪・服部緑地野外音楽堂

the band apart US TOUR w/ Mock Orange
2018年12月1日(土) アメリカ・サンディエゴ THE SODA BAR
2018年12月2日(日) アメリカ・ロサンゼルス THE ECHO
2018年12月4日(火) アメリカ・アナハイム CHAIN REACTION



FRONTIER BACKYARD リリース・ライブ情報

“change feat.おかもとえみ(フレンズ)”(Music Video)

“SO FAIR feat.西寺郷太(NONA REEVES)”(Music Video)

FRONTIER BACKYARD『Fantastic every single day』2018年10月10日発売
NIW-142 ¥3,310円(税込)
《収録曲》
 01. DIS SONG
 02. SO FAIR feat.西寺郷太NONA REEVES
 03. TOO YOUNG TO STOP
 04. change feat.おかもとえみ(フレンズ
 05. Paper plane
 06. Back to new life
 07. last soul
 08. My regulations
 09. BURN
 10. Broken clock's moving
 11. Houseplant
 12. Fantastic every single day

「『Fantastic every single day』release tour」
2018年11月9日(金) 東京・TSUTAYA O-WEST
2018年11月16日(金) 大阪・Shangri-La
2018年11月17日(土) 愛知・RAD HALL



ASPARAGUS リリース・ライブ情報

“i want ya”(Music Video)

“gn8”(Music Video)

ASPARAGUS『ASPARAGUS』発売中
3P3B-81 ¥3,024円(税込)
《収録曲》
 01. i want ya
 02. SHALL WE DANCE?
 03. MAY BE OR MAY BE NOT
 04. LOST SHEPHERD
 05. BAD CAROL
 06. 小さな一歩
 07. SUGAR
 08. STOP DOO WOP
 09. BLUE人
 10. MESSED UP
 11. THAT'S WHY
 12. gn8

「Green or White -ASPARAGUS ONEMAN SHOW-」
2018年10月28日(日) 北海道・札幌DUCE
2018年11月23日(金・祝) 福岡・Queblick
2018年11月25日(日) 大阪・FANDANGO
2018年12月1日(土) 愛知・名古屋APOLLO BASE
2018年12月15日(土) 宮城・仙台enn2nd
2018年12月22日(土) 東京・新代田FEVER

HUSKING BEE「Lacrima Tour」
2018年10月12日(金) 東京・渋谷TSUTAYA O-WEST

new T.W.I.M BOMB NIGHT vol.25 =T.W.I.M 21st Anni. Special!! “Start Again From Scratch”=
2018年10月25日(木) 愛知・名古屋CLUB Zion

BLUE RESISTANCE 6th ANNIVERSARY LIVE ~東北ライブハウス大作戦石巻支部も6周年だっちゃ~
2018年10月30日(火) 宮城・石巻BLUE RESISTANCE

rem time rem time 2ヶ月連続企画 「ドラマ vol.7」
2018年11月10日(土) 東京・八王子RIPS



提供:asian gothic label / ポニーキャニオン / 3p3b / Niw! Records
企画・制作:ROCKIN’ON JAPAN編集部