岡崎体育/さいたまスーパーアリーナ

岡崎体育/さいたまスーパーアリーナ

●セットリスト
【第1部】
01. Overture
02. Open
03. R.S.P
04. 感情のピクセル
05. からだ
06. Naked King
07. FRIENDS
08. Horoscope

【第2部】
幕間映像①岡崎体育とバーチャル食事デート体験
09. 今宵よい酔い
10. MUSIC VIDEO (short version)
11. Voice of Heart
12. フェイクファー
13. スペツナズ
14. 龍
15. Okazaki Hyper Gymnastic

【第3部】
幕間映像②「なにをやってもあかんわ」MV
16. Stamp
17. トロッコにのって
18. オーディオコメンタリー
19. ポーズ~キミの冒険 (medley)
20. Voice of Heart 2
21. XXL
22. The Abyss

(アンコール)
EN01. 鴨川等間隔
EN02. エクレア

(ダブルアンコール)
WEN01. Explain


美しく、楽しい、そして忙しないほど心を揺さぶられ続ける、変なライブだった。それはまさに、岡崎体育そのもののようなライブだ。メジャーデビューよりも遥か遡る2012年から、岡崎体育が事あるごとに言霊として残し続けてきた夢の舞台=さいたまスーパーアリーナでのワンマン「BASIN TECHNO」。北は北海道から南は沖縄まで、また諸外国からも、計18000人のファンが駆けつけた(と、ライブ中のオーディエンスとの対話で明らかになった)ステージの模様を、振り返ってみたい。

岡崎体育/さいたまスーパーアリーナ
岡崎体育/さいたまスーパーアリーナ

開演前の注意事項アナウンスも岡崎体育自身によるもので、恰幅の良いシルエットを巨大な幕に映し出しながら、「岡崎体育ですヨロシクーッッ!! 夢、叶えに来たぞーっ!!」と大歓声を誘ってライブはスタート。挨拶代りのジャブというよりもめちゃくちゃ重い全力ストレートのようなダブステップ“Open”から、「ちょっと踊りすぎ。僕とジャンケンして勝った人だけ踊ってください」とインタラクティブに巻き込むライブチューン“R.S.P”で加速度的に盛り上がる。華々しく迫力に満ちた音響もバッチリで、彼が何とも嬉しそうにニヤニヤしている表情をカメラに抜かれると、アリーナからは冷やかし混じりの祝福の声が飛び交っていた。

岡崎体育/さいたまスーパーアリーナ
岡崎体育/さいたまスーパーアリーナ

アリーナ中央の花道が平均台のように細かったり、センターステージに飾られているのが花ではなくエノキだったり、会場の運営スタッフになんと藤木直人が混じっていたりというギミックを紹介しつつ、ファイアボールの吹き上がる“感情のピクセル”ではもちろん、18000人を誰一人として置き去りにしない《みんなでたのしく うんぱっぱのぶんぶん》である。“Naked King”は「心のキレイな方のみ聴き取れる周波数でパフォーマンスしております」というわけで僕には何も聴こえないのだけれど、口パクというよりはすこぶるエモーショナルな顔芸の如きエアボーカル、そしてキレッキレなアクションのおかげで、音楽が聴こえてくる気がする。凄い。

ゲストとして来場したバンドマンたちを全力で挑発する、テクノポップペンギンの友人=てっくんとの“FRIENDS”(「右のイヤモニ付け忘れたんで、いったんてっくんを外しますね」の何気ないくだりが可笑しい)や、占いの台詞がすべて新たに差し替えられた“Horoscope”など、期待の斜め上を行く一期一会のライブ体験も岡崎体育ならではだ。

岡崎体育/さいたまスーパーアリーナ
岡崎体育/さいたまスーパーアリーナ

ワイヤー宙吊りで岡崎体育が再登場する第2部以降も、リフト仕掛けのセンターステージがせり上がる場面で2コーラス目の歌詞を忘れる“Voice of Heart”や、この日会場限定販売のシングルでデビューしたてっくんによる、やたら大人びたロマンチックなナンバー“フェイクファー”(オリコンデイリーチャートでは見事1位を奪取)を届ける。一方で、遂にライブ初披露された名曲“スペツナズ”や、さいたまスーパーアリーナ公演発表の夜に書かれた“龍”の神秘的にして壮大な鍵盤弾き語りなど、音楽そのものの力で胸を揺さぶる一幕も盛り込まれていった。

さらに第3部では、LED電飾が施されたド派手なトロッコに乗り込んでアリーナ内を周回しつつ、この華やかな場面で誰も知らない新曲“トロッコにのって”で「みんな歌ってー!」と無茶振りしたり、ライブの映像作品化を見越したその名も“オーディオコメンタリー”の語りで笑わせたりする。とことん変なライブだが、岡崎体育の凄さはまさにこれである。

岡崎体育/さいたまスーパーアリーナ

二枚目スターでもなくバンドも組めなかった彼が、卑屈なメタ視点でポップカルチャーの「あるある」を批評しつつ、それを丸ごとアリーナ規模の巨大なエンターテインメントに変えてしまうこと。なぜ彼にそれが出来るのかと言えば、それは紛れもなく、彼が心底ポップカルチャーを愛し、バンドを愛し、音楽を愛しているからだ。満面の笑顔で渾身のポケモン愛を注ぎ込む“ポーズ”と“キミの冒険”のメドレーを経て、本編終盤は“XXL”、“The Abyss”という華々しい盆地テクノの熱狂で締めくくられたのだった。

岡崎体育/さいたまスーパーアリーナ

アンコールでは、個人的にもこの瞬間を待ち望んでいた名曲“鴨川等間隔”で大合唱を誘う。アルバム『XXL』収録バージョンのアップテンポなトラックだが、間奏では熱いエアギターを奏で、終盤の《鴨川等間隔 橋の上 見下ろしながら見下される》という歌詞を自主制作音源バージョンの昂ぶったメロディで歌う。最高だ。「6、7年前、音楽を続けていいのかと思いながら書いた曲です」と披露されたのは、これまた重厚なオルタナサウンドの美曲“エクレア”。スクリーンには手書きの歌詞が映し出される。《いい曲といい歌はいい人といい場所で》。そんな思いが18000人に共有される約束の場所は、なんとも美しい光景だ。

岡崎体育/さいたまスーパーアリーナ

さらにダブルアンコールでは、台風の直撃に見舞われた奈良での初ワンマンを回想(こちらの公式ブログ記事を参照)しつつ、「そのときの感動を、もう一度ここで味わわせてもらってます」と告げて、《いつかはさいたまスーパーアリーナで口パクやってやるんだ 絶対》の思いを永遠に刻み付ける“Explain”の歌い納め。見事としか言いようのない晴れ舞台だ。数々の名作MVを共に生み出してきた寿司くん(aka.こやまたくや/ヤバイTシャツ屋さん)も釘を刺していたそうだが、まだまだ走り続ける岡崎体育を見ていたい。そんなふうに思いを新たにするステージであった。あらためて、おめでとう、岡崎体育。(小池宏和)

岡崎体育/さいたまスーパーアリーナ

終演後ブログ
【速報】岡崎体育、悲願のさいたまスーパーアリーナを見届けた
これまで本人が公言してきたように、岡崎体育はミュージシャンだ。「おっさんのカラオケを、金払って観に来てるんやで。みんなそうやで」と18000人に言ってのける、そんなミュージシャンだ。カラオケならまだしも、口パクの時間だってあるし、僕には無音にしか思えない時間だってあった。あれはもしかすると…
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