欅坂46 “エキセントリック”MVのメッセージを映画『台風クラブ』との共通点から読み解く

欅坂46 “エキセントリック”MVのメッセージを映画『台風クラブ』との共通点から読み解く - 『真っ白なものは汚したくなる』<TYPE-A>『真っ白なものは汚したくなる』<TYPE-A>
欅坂46が先日、“エキセントリック”のミュージックビデオを公開した。


同曲は4月にリリースされた4thシングル『不協和音』の通常盤に収録されていた楽曲だ。シティポップ風の洗練されたサウンドに、メンバーがラップ調で歌唱するという、欅坂46にとって今までになかった新鮮なナンバーで、発表当初から「これは名曲だ」という声も少なくはなかった。

しかしMVは一向に公開されないままで、欅坂46主演ドラマ『残酷な観客達』の主題歌に決定。5月にオンエアされた初回放送で初めてMVの一部が公開された。その時の個人的な所感として名作映画『台風クラブ』(1985年/相米慎二監督)を連想したのだが、フルバージョンを観て、まさにこれは『台風クラブ』のオマージュだったことに気が付いた。

『台風クラブ』という映画は、中学生の少年少女たちを主人公に、思春期の「鬱屈した感情」や微妙な年頃ならではの「危うさ」が、台風という不安定な気候と共に表現されている。子供と大人の成熟途中にあるあの微熱っぽさというか「なんだかよくわからないけど、変なことをしてしまう」といったティーンならではの酔狂が、「学校」という日常と、「台風襲来」という非日常の狭間で描かれており、映画好きからはフェイバリットとしてよく名前が挙げられる作品だ。

そしてこの映画で最も有名なのが、台風の中、校舎に残された少年少女が下着姿で外に出て、びしょ濡れになりながら乱痴気騒ぎをするシーン。この場面は画的にもかなりの衝撃で、10代後半でこの映画を観た私の脳裏に強く焼き付いている。

“エキセントリック”のMVでは、『台風クラブ』のこのシーンのように、メンバーが激しい雨風に打たれながら、なりふり構わず、前衛的ともいえる今までに見たことがないようなダンスを踊っている。そのほかにも白い丸襟ブラウスに紐リボン、どこか年季が感じられる木造校舎、机が積み重なっているシーンなどはどれも『台風クラブ』の劇中にも登場するものだ。

《I am eccentric 変わり者でいい/理解されない方が よっぽど楽だと思ったんだ》

《キレイな川に魚はいないと/したり顔して誰かは言うけど/そんな汚い川なら/僕は絶対泳ぎたくはない》

胸に秘めた大人・世間に対する反発の言葉を並べ、少女ならではの潔癖さを浮かび上がらせる楽曲“エキセントリック”。そして、大人のどんな嘘でも見透かしてしまうような平手友梨奈の鋭い目つき、特異な存在感を中心に、どこかヒリヒリとしたオーラを纏う欅坂46というグループだからこそ、『台風クラブ』と溶け合って、また新たに誰かの心に刻まれるようなセンセーショナルな作品が完成したのだろう。(渡邉満理奈)
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