セルフプロデュースで美しい世界を描くSEVENTEENの凄さとは?

「ボーカル」、「ヒップホップ」、「パフォーマンス」の3つのチームで構成される13人組のボーイズグループで、自主制作アイドルであると公言しているSEVENTEEN。2015年に韓国でデビューして以降精力的に活動している彼らは、4月に5都市12公演を回った日本ツアーを終え、まもなく日本1stシングルをリリース予定、さらには「サマーソニック2019」への出演も決定している。さて、当たり前のように「自主制作アイドル」なんて記したが、このワードから連想されるイメージとは一体何であろうか? 彼らの存在を知らなかった人々、もしくはどんな活動をしているのかを知らなかった人々を唸らせるほどに、その真の彼らの姿はクリエイティブ、そして芸術的であるのだ。


その「自主制作」しているもののひとつが、まず曲である。楽曲制作の中心となるのは、ボーカルチームのリーダー・ウジ。彼は、SEVENTEENの楽曲が成立するうえでは必要不可欠な存在で、舵取り役と言ってもいいほど。その舵取り役であるウジに、しっかりと音楽基礎が身についているからこそ展開されていく音の数々と、楽曲内で聴かせる言葉遊びの面白さは、SEVENTEENの作品のひとつの特徴だと思う。常に新しい要素を取り入れる探究心旺盛な姿勢は、まさに芸術家である。また、作詞に関しては、SEVENTEENを率いるグループのリーダー・エスクプスを含むヒップホップチームを筆頭に、他のメンバーが加わることも多い。その作り上げられた数々の作品から窺えるのは、メンバー全員に共通して言えることかもしれないが、自分の全部を差し出して相手の全部を肯定する、人一倍優しい人であるということ。そして、誰よりも彼ら自身が「SEVENTEEN」の音楽を愛しているということだ。だから、心が痛いと泣いてしまうような悲しみも、優しい言葉が優しいとは限らないということも、ちゃんと「自分たちのもの」として形にできるのである。


あと言うまでもないであろうが、13人という大所帯を活かしたフォーメーションダンスは、驚くべき、というか目が飛び出るほどクオリティが高いのである。なんというか、「クオリティ」なんて単語で片付けるのがもったいないくらいに。腕の高さ、腰の角度、時には指の反り具合まで揃った常に弩級のパフォーマンスと、曲中に複雑に織りなされるステージングの変化には、圧倒されるのみ。ただただ「美しい」と言うほか、言葉はないと思う。

そのパフォーマンスをまとめあげ、チームのリーダーを担うのはホシだ。長期間にわたって練習生として育ててきた根性は健在、むしろグループの規模が大きくになるにつれて、その歩んできた道を自身で強くし、たくましさを増大させているかのように感じる。そんな彼が核となり、構築される様々な動きは、本当に美しい。先日、フジテレビの音楽番組『Love music』に出演し、新曲“Happy Ending”を披露していたが、決して激しくはないミドルテンポの中で繰り広げられる繊細な動きには、改めて感服させられた。振り付けだけではなく、ターンする一瞬のあいだに浮かべた儚げな表情も、その儚さを昇華させるように一瞬笑った最後の表情も含め、彼らは身体全てで、曲中の《この物語は君を守る話さ/だけどね エンディングは君が僕を助ける》という言葉に込められた「究極の愛の形」を示していた。たとえ、他のグループには表現しきれずに未消化であった部分も、目の前にステージと伝えたい人たちさえいれば、「音」、「言葉」、「パフォーマンス」、この3つを手にしている彼らは、感情の起伏を自由自在に操ることができるのである。

リスナーのことを想いながら羽ばたかせた優しさの美学と、貪欲に求め続けギラついた根性。その果てに生まれた「SEVENTEEN」というアイデンティティそのものに、彼ら自身が絶対的な自信と誇りを持っているから、ステージングを見るたびに「彼らが人生の一部をこちらに預けてくれているのではないか」と、そんな気持ちさえ抱いてしまう。でも、ステージに立ち続けるその姿は、SEVENTEENと出会った全ての人の心に棲む強いお守りとなってくれる――いや、もう既に多くの人を守る盾になっているはずである。そして思うのだ、13人の男たちが完全無欠のヒーローとなる日はそう遠くないのかもしれない、と。(林なな)
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