ユニゾン・田淵による誰もブッ込まないような奇才アレンジ、フレーズ、歌詞7選

ユニゾン・田淵による誰もブッ込まないような奇才アレンジ、フレーズ、歌詞7選
今年結成15周年を迎えるUNISON SQUARE GARDEN。既に様々なアニバーサリー企画が走り出しているが、来月7月にも楽しみが盛りだくさん。7月3日(水)にはカップリング・ベストアルバム『Bee side Sea side ~B-side Collection Album~』を、そして24日(水)には初のトリビュートアルバム『Thank you, ROCK BANDS! 〜UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Album〜』をリリース。さらに27日(土)には「プログラム15th」と題した記念ライブが大阪・舞洲スポーツアイランド 太陽の広場 特設会場で開催される。

ということでみなさん、盛り上がる準備はできていますか?この記事では、これまでユニゾンが発表した曲の中から、ほとんどの曲を手掛けてきたソングライター・田淵智也(B)の異才っぷりが特に発揮されている箇所を紹介していきたい。なお、①、③、④、⑦は『Bee side~』にも収録されているカップリング曲で、②、⑤はそれぞれ『Populus Populus』、『Dr.Izzy』からの選曲だが、マニアックな曲の方が偉いと思われるのは不本意なので、⑥のようなシングル表題曲も入れておいた。田淵の異才っぷりを知れば知るほど、これらの曲を共に演奏するのが斎藤宏介(Vo・G)と鈴木貴雄(Dr)である必然性もきっとお分かりいただけるはずだ。(蜂須賀ちなみ)


①ガリレオのショーケース(2008年)

(2:30~3:08)※“ガリレオのショーケース (D.A style)”の場合
変拍子、3連符、シンコペーション etc.を取り入れた間奏のセッション


後のライブ定番曲をカップリング曲として収録し、「隠れた名曲」的な存在にしてしまった時点で田淵は捻くれているなあと思わざるを得ないが、ここでは間奏に焦点を当てたい。イントロから鳴っているリフを主体としつつ、3連符やシンコペーションを取り入れ、4拍子と3拍子を行き来し……と複雑な構成をしている一方、途中テンポをアップダウンさせることにより、疾走感が損なわれないよう工夫されている。数学が得意そうな感じというか、「破綻させない」と「バンドのロマンも捨てない」が両立しうるバランスを理詰めで考え狙っている感じが、初期曲の時点で垣間見えるのが恐ろしい。特に、自由でありながらも基礎に忠実な鈴木のビートは、このようなアレンジをバンドで演奏する際の要となっているようだ。

②CAPACITY超える(2011年)

(2:35~2:37)
歌詞を読むだけでも曲を聴くだけでも分からない、隠し味的なフレーズ


歌詞カードには《大嫌いなあのミュージシャンも一緒にお願いしたい》と記載されているが、それとは異なる言葉が歌われているので、ぜひ実際に聴いて確認してみてほしい。また、このフレーズのような皮肉の効いたユーモアが好きな人には、“蒙昧termination”や“マジョリティ・リポート(darling, I love you)”もおすすめだ。ウォーキングベースとシャッフルビートを用いた“CAPACITY超える”は、ユニゾンには珍しいジャズテイストの曲。ツアーのセットリストではご無沙汰な印象があるが、斎藤のボーカルは当時よりも今の方が色気があるし、セッション要素のある間奏も今やるとまた違う感じになりそうだし、そろそろライブで聴きたいと思う曲のひとつだ。

③ラブソングは突然に ~What is the name of that mystery?~(2012年)

(3:07~)
ラスト48秒でラブソングに変身


小田和正の名曲“ラブ・ストーリーは突然に”はイントロのギターで恋に落ちた瞬間、つまりラブストーリーが突然始まったことを表現していたが、この曲の場合、《ところでsay I love you!》と唐突に話題が転換。タイトル通りラブソングが突然始まるという、ぶっ飛んだ構成になっている。歌詞は語感重視型だが、デタラメに単語を並べているわけではなく、計算し尽くされている印象。例えばBメロからは、「2番で曲名にある《お名前》(=the name)という単語を使う→そのため1番の同箇所で似たような発音の造語《女前》を使う→直前に《男前》という単語を配置して《男前も女前も》とする」という逆算の思考が読み取れる。

④I wanna believe、夜を行く(2014年)

(1:09/1:20/2:49~3:04/3:43~3:58 etc.)
ボーカルとハモるだけではない多彩なコーラスワーク


ユニゾンのライブに行くと、難解なフレーズを歌いながらガシガシとギターを弾く斎藤に驚愕しがちだが、田淵や鈴木の歌うコーラスラインもかなり難解。なぜ難解なのかというと、「ボーカルとハモる」の範疇に留まらない役割がコーラスに求められがちだからだ。“I wanna believe、夜を行く”は、そんな田淵っぽいコーラスワークがふんだんに取り入れられた曲。サビに入っている「ハイ!」や《(it’s you)》という掛け声、Dメロにおけるボーカルと掛け合うような展開、クライマックスにおけるオブリガード(セカンドメロディ)的な動きなどがそれにあたるだろう。これらの特徴は、田淵が外部アーティストへ提供した曲にも通ずるもの。例えばLiSAの“Rising Hope”にもこのようなコーラスワークが見受けられる。

⑤オトノバ中間試験(2016年)

(2:30~2:35)
最も踊れる場面であえて歌われる《いくらなんでも都合良過ぎるから あんたなんかと踊れない》


2番のサビ冒頭、曲の構造上最も盛り上がるポイントに、聴き手との間に境界線を引くようなフレーズをあえて配置。「この手は差し出さない」、「味方なんかにはなれない」、「共犯関係とはいえ絆なんか無い」などと言葉を変えながら、「僕らは好きにやるから君も勝手に楽しむといい」と繰り返し伝え続ける、田淵らしい表現だ。この曲はユニゾンにはよくある、ライブや観客に対するバンドのスタンスを歌った曲。ボーカリストとソングライターが違う彼らならではのフレーズ、2:12~2:20における歌詞通りのアレンジが施された箇所(《出来損ないのスラップ》は謙遜しすぎ)など、全体的に遊び心満載だが、遊びながらもかなり核心的なことを言っている。

⑥春が来てぼくら(2018年)

(2:04)
めくるめく転調とひとさじの違和感


メロディの抑揚に合わせてさらりと、しかし、常軌を逸したレベルで何度も転調する曲。爽やかに見えて狂気的な展開を実現するにあたり、ピッチの正確なボーカルが大きく貢献している。なかでも2:04は特殊で、1つの4分音符(《髪型変えて一個パチリ》の最初の「か」)をきっかけに転調。ここだけ4+1拍子になる違和感が面白い。これと似たような構造の曲が他にあるわけではないため「田淵っぽい曲」とは言えないかもしれないが、画期的であることには変わりないため、今回ピックアップすることにした。“シュガーソングとビターステップ”や“Invisible Sensation”、“fake town baby”もそうであるように、ユニゾンがここ最近手掛けたアニメ主題歌は2番以降、つまりTVでオンエアされる範囲を過ぎてからの展開が特に凄まじい。音源を購入し、フルサイズで聴いた人だけが享受できるご褒美みたいだ。


⑦Micro Paradiso!(2018年)

(0:32~0:33/0:44~0:51/1:44~1:48 /2:32~2:45 etc.)
田淵のワードセンスが終始炸裂


同じシングルから2曲も選ぶことになってしまったが、この曲はどう考えても外せなかったので許してほしい。なぜなら、“Micro Paradiso!”には作詞家としての田淵智也の特徴がギュッと詰まっているからだ。例えば、《コテンのパン》および、《ノストラ旦那》と《ダムス兄貴》のような1単語を2分割する手法、《間違ってないのなら ないのなら 見逃して!》、《精鋭! yeahは要らない!》といった同音の反復、《「あなたを愛してるわけじゃない!」》をはじめとした天邪鬼な言葉選びなどがそれにあたる。全編にわたり田淵のワードセンスが炸裂しまくっているこの曲は、《この番組はご覧のスポンサーの提供でお送りすると見せかけもう一度》というアナウンスを機に演奏が中断→再開するくだり(2:32~2:45)など、アレンジ面もかなりユニークである。先日、スタジオライブ映像がYouTubeにアップされたので、そちらもぜひチェックしてみてほしい。

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