小沢健二 続き

小沢健二 続き

前回の続き。小沢健二「ひふみよ」ツアー、
東京・中野サンプラザ、1日目についてです。

ライブが始まる前、やたらノドが乾いた。
で、自分が緊張していることに気がついた。
それから、ライブが始まって、その緊張がだんだんほどけていって、
5曲くらいやったあたりで、なんで自分が緊張していたのかがわかった。

びびっていたのだ。
ただの懐メロだったらどうしよう。
老けこんでたらどうしよう。
歌えていなかったらどうしよう。
イタいもんだったらどうしよう。
ずれてたらどうしよう。
さむかったらどうしよう。
時代遅れになってたらどうしよう。
ぶっとびすぎててわけわかんなかったら、どうしよう。

というような、「××だったらどうしよう」を、山のように抱えて、
俺はサンプラに来たんだなあと。
で、もしその不安が的中した場合、「あっちゃあ、終わったなあ小沢」とか言って
がっかりして帰ればすむんじゃなくて、何か、自分の重要な
ある部分を真正面から否定されたような、そんな気持ちに陥って、
肩を落として、すごすごと帰ることになるなあ、と。
下手すると、しばらく立ち直れないかもなあと。
と、そんなようなことだったのだと思う。

で。よかった、杞憂だった。失礼しました。
それらの「どうしよう」、全然あてはまらなかった。
いや。部分的にはあてはまるか。
懐メロな部分もあったし、若干ぶっとび気味なとこもあったし
歌えていないところもあったけど(まあ元々歌がうまいタイプの人ではないが)、
それらをふっとばす……いや、ふっとばすんじゃないな、
そういうのも全部含めて、でも
「あり! 大あり! 今もあり! というか、今だからよけいあり!」
という方向に持っていく、そんなステージだった。

もう、とにかく、全編にわたって、圧倒的に小沢健二。小沢全開。
当時を知っている方ならわかってもらえると思うが、
ほら、小沢のあの感じ、あるじゃないですか。
ポップに、楽しく、カジュアルに、時に軽々しく、そして時にチャラく、
「思想をぶちまける」
「哲学を放射する」
あの感じ。
しっかりと、あれでした。
いや、楽しさやカジュアルさはあったけど、
チャラさや軽々しさは、前ほどじゃなかったかも。
ともあれ。それが、「90年代のもんだなあ」ってところも、まあ、なくはないけど、
それ以上に「ああ、2010年仕様だとこうなるんだ」ってところの方が、強くある。
あるいは、「ああ、90年代とかって話じゃなくて、こんなにも普遍的な
ものだったのか」と、今だから思い知る。

そういうものだったと思いました。
いやあ、よくて、よかったあ。

ただ、正直、今日の会場でも何人か見かけた、
明らかにリアルタイムでは知らないであろう若い世代が、
いきなりこれを観ると、なんだかわからないかもなあ、とは思った。
でもまあ、それでもいいや、とも思った。

これからご覧になるみなさん、お楽しみに。
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