このアルバムの中では、なんと言っても10年前に発表された“ビビった”をセルフオマージュしつつ、ファンへ向けた熱い思いが綴られた“ネコカミたい”が熱い。
さらに、全曲を通してキュウソの進化を感じることができる。キュウソ節と言っても過言ではない、エレクトロでロックでパンクなサウンドは変わらないのだが、たとえば“わや”の攻撃的でどこか闇が垣間見えるサウンドメイクや曲構成、“エクゾチックアニマル”の視界が広がっていくようなドラマチックな展開など、一曲一曲のクオリティがさらに増している。
そして、ヤマサキ セイヤ(Vo・G)が書く歌詞には、誰かを応援するようなものが増えた。昔と比べてどこかまろやかで素直な気持ちが書かれたものが多いのも、10年の活動の中で起きた大きな変化だ。とくに“やってみようぜヒーロー”の《一手違うと非難されそなむずい世の中なってきたけど/日々の生活の中で思いやりがあればいい/人と人の繋がりを面白がって生きていたいよ/無理な奴も現れる一歩引いて浅い付き合いでいい/泣く時泣いたらケラケラと笑い飛ばしていよ/突発的な優しさに救われてく 初めましてでも》という2番の歌詞がよすぎる。こうしたほうがいいよ!とか、全然大丈夫だよ!みたいな表現ではなく、「そんなこともあるよね。わかる。頑張りすぎなくてもいいと思うよ」というような優しさが、言葉から現れていて、この歌詞を見たときにとても感動した。
10年間、時代の変化をしっかりと捉えながらも軸はブレることなく活動を続けてきたキュウソがこのような歌ってくれるから、より一層心に突き刺さるし、勇気をもらえる。キュウソはまだまだ可能性に満ち溢れたバンドだ。
JAPAN11月号のインタビューでは、今のメンバーの気持ちやバンドのモードについてもたっぷりと語ってくれているので、ファンの方は彼らと歩んできた10年を振り返りながら、これからキュウソを知る方は総括的な今回のインタビューをぜひ楽しんでみてください!(岩田知大)
『ROCKIN'ON JAPAN』11月号のご購入はこちら