それにしても、坂本真綾のライブは本当に素晴らしい。
彩り豊かなアレンジ、澄み切った歌声、輪郭のはっきりした言葉とメロディ。
熟練のスキルをとびきりみずみずしい感性で彩るパフォーマンス。
ポップミュージックの粋を集めた完璧なライブだった。
磨き抜かれた一曲一曲を聴いていくにつれて心と耳が純化されていくような、血が入れ替わっていくような爽快感がある。
でありながら、最高の気持ち良さとゆるさを混同させないのがこの人らしいなと思う。
ただストイックなわけではない。
自分とみんなが同じだけの深さで、限られた時間を楽しみ抜くための準備と尽力を惜しまない、ということだろう。
昔からそのスタイルは坂本真綾の活動にあったが、20周年という大きな円環を回った今、彼女の佇まいには確信めいた強さとしなやかさがある。
本物の良さは、やはり相応の時間をかけた道の先にしかないのだと思う。
ツアーは2年ぶりだったが、今年はこの素晴らしいライブを何回も観せてほしい。