最悪。トラヴィス・スコットが主催のフェスで8人が死亡。

2018年12月LAフォーラムにて

(11月12日更新)

なんと悲しいニュース。アストロワールドに参加し、入院していた22歳の大学生Bharti Shahaniさんが、水曜日の夜に亡くなった。CNNが報じている。彼女は妹さんと、従姉妹とこのフェスに行っていたそう。ご冥福をお祈りします。これでフェスに参加し亡くなった方は9人になった。

現在、9歳の男の子が、治療のための人工的昏睡となっている。
https://twitter.com/cnnbrk/status/1458887407655346178

またトラヴィス・スコットと彼のチームが、亡くなった方の家族とフェスに参加していた人たちで支援が必要な場合は、連絡を欲しいとメールアドレスを公開している。
https://twitter.com/billboard/status/1458901851865292801

訴訟の数は46になっていて、弁護士は、100件以上の訴訟の準備をしているそうだ。
https://twitter.com/billboard/status/1458905291307642881

こんなことが2度と起きませんように。

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(11月9日更新)

1. トラヴィス・スコットが亡くなった方8人全員のお葬式代を出すそう。また心的障害を受けた方たち全員にバーチャルでカウンセリングも手配する。
https://twitter.com/billboard/status/1457836338980478984

2.トラヴィスが、アストロワールド・フェスに来た観客全員のチケット代を返金すると発表。
https://twitter.com/Variety/status/1457693397477638146

3. 9歳の男の子が意識不明の重体で入院中。
彼は、お父さんの肩に乗ってライブを観ていたそうだけど、お父さんが倒れた後、地面に叩きつけられたそう。辛すぎる。どうか回復しますように。
https://twitter.com/ComplexMusic/status/1457869484333600769

4. 今週末11月13日に出演予定だったラスベガスのフェスDAY N VEGASの出演はキャンセル。代わりに誰が出るのかはまだ発表されていない。ポスト・マローンか、J.コールという噂。

5. トラヴィス・スコットとプロモーターであるライブ・ネイション、マネージメントが訴えられている。現時点ですでに14の訴訟が起きていて少なくとも35の訴訟の準備がされている。「予想できたことであり、防げた」こと。「重過失」であると訴えられている。
https://twitter.com/RollingStone/status/1457466666145787908

亡くなったAxel Acostaの家族の弁護士は、記者会見で「Axelが倒れた時、その他の観客は自分たちが窒息しないために、彼の体の上をまるでゴミのように踏んで行った」と語っていた。あまりに辛すぎるコメントだ。

その他の訴訟も、「多くの人たちがセキュリティに助けを求めたが無視された」としている。

中には、出演したドレイクもトラヴィスと一緒に「暴動と暴力を煽動した」と訴えているものもある。

6. ライブの前から、主催者、ヒューストン市関係者は、観客をコントロールするのが難しいかもしれないことが分かっていた。ヒューストン警察署長は、ライブ前にトラヴィスの楽屋にその懸念を伝えに行ったと発表している。
https://twitter.com/houstonpolice/status/1457788638805200905

ライブは当初の予定より30分早く終了したが、市の関係者が「大量の怪我人が出た」と報告していたからは40分後だった。なぜすぐに止めなかったのか、については、ライブを中止にすれば、さらに暴動の恐れがあるとの懸念もあったと報じられている。ライブ・ネイションは、急激な悪天候、銃乱射、暴動、災害時の医療対応など緊急事態の対応について計画していた。また、コンサートを止める権利があるのは、エグゼクティブ・プロデューサーとフェスティバル・ディレクターのみと決められていた。
https://www.cnn.com/us/live-news/astroworld-houston-crowd-surge-travis-scott-11-08-21/index.html

7. 亡くなった方8人のうち1人の身元が確認されていなかったが、全員の身元が確認された。
https://twitter.com/abc/status/1457789104498757640?s=21

亡くなった方の家族の記者会見がいくつか行われ、婚約者を救おうとして亡くなってしまったと泣きながら語る家族や、コンサートは楽しむために行ったのであって、死ぬためじゃなかった、と泣きながら語る姿などがあまりに痛々しかった。亡くなった方の死因が分かるのには、数週間かかるそう。

8. アストロワールド・フェスに出演したロディ・リッチは、ギャラを亡くなった人たちの家族に寄付すると発表。
https://twitter.com/XXL/status/1457195693173583872

9. トラヴィス・スコットがメッセージの映像を公開。
https://youtu.be/9j7JLxMLe88

トラヴィス・スコットは単なるヘッドライナーの他に、フェスのキューレーションをしたので普通とは立場が違うとは言え、個人的にはパフォーマンスしている人にライブを止めるかどうかの判断をするのはなかなか難しいのではないかと思う。もちろん見える範囲で何かあれば止めるとは思うが。よくステージから会場の電気を付けて欲しいと言うアーティストがいるように、観客席は暗くて見えないのではないかと思うし、何よりパフォーマンスするのに精一杯だと思うのだ。そのために、セキュリティや警察、主催者など、客観的に判断するべき人たちがいるわけだし。アメリカのフェスやライブは、これ以前に銃乱射などの危険もあるため、入場する際には厳重なカバンのチェックが行われる。大きい会場であれば、一定の大きさ以上のカバンは透明でなくては入れないなどの規定もある。空港と同じような金属探知機があるし、コロナ以降は、ワクチン接種証明書も見せるなど、調べることがひとつ増えた。その矢先に、もうひとつ懸念が増えたと思うと、気が重い。

トラヴィスのライブは、とりわけ単独の時は、観覧車、ジェットコースター、パイロなど間髪入れずに過剰に煽り続けるのが特徴で、怒りの表現のみならず遊園地のような喜びにも溢れたライブだ。モッシュピットもあるし、ダイブもある。ライブという安全な場所でそれが体験できることが彼のライブの良さだった。ただし、彼の場合は、これ以前にもNYのライブで彼が煽ったため、押されて怪我をしたと訴訟が起きているし、今回も何らかの理由でそのタガが外れてしまった。残念で仕方ない。

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本当に最悪なニュース。

トラヴィス・スコットが、地元ヒューストンのNRGパークで、11月5、6日に開催したフェス、アストロワールドで5日、トラヴィスの出演中に14歳から27歳の8人が死亡した。ただし、1人の身元はまだ確認されていない。

正式な死因はまだ発表されていないが、ヒューストン警察と消防が行った記者会見によると、50000人が参加したこのフェスで、トラヴィスがステージに登場する8時45分の直前にカウントダウンが始まったくらいから9時くらいにかけて、「観客がステージ前に殺到し、さらにパニックが起きて、けが人が出た。そこで、将棋倒しとなり、意識不明となった人たちがいて、さらなるパニックが起きた」「救急室は、すぐにいっぱいになってしまった」ということ。

さらに、現在17人が入院していて、うち11人が心停止。300人以上が軽傷で手当てを受けている、ということだ。

トラヴィス・スコットの声明文。

「昨晩起きたことに関しては、あまりのショックで完全に打ちのめされています。アストロワールド・フェスティバルで起きたことで被害を受けた家族の皆さんに心より祈りを捧げます。

ヒューストン警察は、現在亡くなった方達の悲劇に関する原因解明を行っているところで、私も全面的に協力しています。

私は引き続きヒューストンのコミュニティと協力して、家族の治癒と支援に尽くします。ヒューストン警察、消防、NRGパークの迅速な対応と支援に感謝します」


主催者とヒューストン市長も声明文を発表している。


市長がNYタイムズに語ったところによると、このフェスには、ワールド・シリーズ以上のセキュリティが配置されていて、警察以外に250人ほどの警備員がいたそうだ。

トラヴィスは、ライブ中に何度か観客に注意していたそうだが、もちろんここまで深刻な事態になるとは思っていなかっただろう。このライブはApple Musicでストリームされていて、ドレイクも出演していた。

色々なメディアのレポートを見ていると、2時の時点で、VIPのゲートが壊され観客が中に入るなど、最初から普通ではない状況になっていたのが分かる。

また、観客がカメラマンのところまで行って、ライブを止めてくれと訴えている姿などもアップされている。
https://twitter.com/LDCMOA/status/1456883559810142208

トラヴィスはこのフェスを2018年から開催していて、去年はキャンセルされた。


フェスのみならず、コンサートに行って、あまりの熱気で人が前に押し寄せ、ヒヤッとする経験というのは誰もがしたことがあると思う。ライブで人が倒れて担ぎ込まれるのを目撃することもあると思う。しかし、すぐに周りの人たちが対処したり、セキュリティが来たり、アーティストが気づいて止めたりと、多くの場合、最悪な事態は回避されてきている。

私は、トラヴィス・スコットのライブはフェスも単独も何度か観ていて、その人気も熱気も尋常ではないが、どれも収集のつく範囲内だった。今回のフェスも、様々なレポートを読んだりする限りでは、お互い助け合い救われている人もいるけど、様々な理由で、熱気とカオスがそれを超えてしまったということだと思う。最悪の悲劇としか言いようがない。


11月6日に行われる予定だったフェスの2日目はキャンセルとなった。

トラヴィスは今週もフェスのヘッドラインになっているけど、どうなるのか。

フェスで亡くなるというと、2000年デンマークのロスキルド・フェスで、パール・ジャムが出演中に、9人が亡くなった悲劇からもう20年以上経っているけどいまだ記憶に新しい。また2010年ドイツのラブパレードでは、21人が圧死。1979年オハイオ州シンシナティで行われたザ・フーのコンサートでも11人が圧死している。

コロナ以降、フェスやツアーなどがようやく再開し、誰もが細心の注意を払って行っている中、防げたはずの事故なので、残念だし、本当に心が重い。今回は、参加した人、主催者、アーティストの誰にとっても悪夢の結果となってしまった。もちろん、亡くなった方達以上の悲劇はない。亡くなった方達のご冥福をお祈りします。

今後、この事故に関して情報がアップデートされたらまたレポートします。



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