ザ・ビートルズの新ドキュメンタリー『ビートルズ’64』がNYでプレミア上映。日本でも11月29日からディズニープラス「スター」で配信。

Courtesy of 2024 Disney Enterprises, Inc.

マーティン・スコセッシがプロデュースし、デヴィッド・テデスキが監督したザ・ビートルズのドキュメンタリー映画『ビートルズ’64』がNYでプレミア上映された。この映画は、日本でも11月29日からディズニープラス「スター」で独占配信される。

予告編はこちら。

内容は、
●64年2月に初めてザ・ビートルズがアメリカに到着してからの3週間を追いかけたドキュメンタリー。
●2月9日のNY”エド・サリバンショー”出演時の映像から、その後ワシントンDC に向かい、
2月11日にワシントン・コロセウムで行ったアメリカでの初コンサート映像。そこからマイアミに向かい
2度目の”エド・サリバンショー”出演時の映像。
●『Get Back』を手掛けたウィングナット・フィルムズがミックスし、”Now and Then”をポールと共同プロデュースしたジャイルズ・マーティンがリミックスしている。
●アルバート&デイヴィッド・メイスルズ兄弟(『What’s Happening! The Beatles in the U.S.A.』)などが撮影した未公開映像17分もあり。
●ポール・マッカートニーとリンゴ・スターの新たなインタビュー映像もある。
●『ザ・ビートルズ”Get Back』を手掛けたニュージーランドのパーク・ロード・ポストが4Kに修復している。

以下、映画の中の映像一部と、プレミアでスコセッシや、オリビア・ハリスン、監督が語っていたこと。

映画の一場面。
1)ポール・マッカートニー”She Loves You”について。
https://x.com/aaakkmm/status/1861403853482049860「”She Loves You”を作っている時に、父が隣の部屋にいたんだけど、僕らの部屋にやって来たから、”She Loves You”を初めて演奏したんです。
“She Loves You Yeah Yeah Yeah”とね。それで弾き終わったら父が最後にこう言いました。『本当に素晴らしい曲だと思う。だけど、”She Loves You Yes Yes Yes”に変えられないかな』とね。周りにいかにアメリカ的気質がなかったかということです」

2)スモーキー・ロビンソンが”You’ve Really Got a Hold on Me”について語る。
https://x.com/aaakkmm/status/1861407845826126023「ザ・ビートルズのような偉大なソングライターが、数えきれない曲の中から私の曲を選び、レコーディングしたというのは、ソングライターとしてそれ以上のこともありません。ソングライターの夢が叶った瞬間であり、それが目標みたいなものだからです。彼らが”You’ve Really Got a Hold on Me”を本当にレコーディングしたかは確かではなく、レコードが発売されるまで知らなかったのです。でも大喜びしました。彼らくらいの偉大な白人グループが、『ブラック・ミュージックを聴きながら育ちました。モータウンが大好きです』と言うのをそれまで聞いたことがなかったからです。ザ・ビートルズの以前にそんなことを言った偉大な白人アーティストはいませんでした」

3)プロデューサーのマーティン・スコセッシが今作について語る。
https://x.com/aaakkmm/status/1861409100283724101「僕らは、このアメリカ初上陸を、ザ・ビートルズの始まりのように思いがちだけど、でも、彼らは当然すでにリバプールやその他の場所で活躍していたわけです。僕も当然その時のことを鮮明に覚えています。この映画を観た、若い世代の人に分かってもらいたいのは、彼ら以前には(アメリカでは)ブリティッシュ音楽シーンは存在しなかったということ。もちろん音楽はあったわけですが、それが他の国からも同様には伝わってこなかったのです。

この映画で”現象”を目撃するわけですが、驚くのは、このイノンセスです。ここには、彼らのクリエイティビティを駆り立てるものがあり、しかも誰も限界があるとは思っていません。彼らを縛り付けているものが何もないのです。歳を取って、作品を作り続けても、結局我々が捉えようとするのは、正に彼らのこの時の若さゆえのエネルギーだと思うのです。若さとイノンセスとそしてアートです」

「彼らはこの後、6、7年続けたと思いますが、それから2、3年のうちに自ら成長しようとしました。普通は、パフォーマーであれ、画家であれ、作曲家であれ、あるレベルに達するのには10年とか、15年、20年など、時間がかかるものですが、でも彼らは5、6年でそのレベルに達てしまいました。最初のレコードと最後のレコードを見ればその素晴らしさは明らかです」

「今でも忘れないのが彼らが到着する4日くらい前に新聞に、『このキッズがどれくらいのものなのか見てみよう。髪型も変だし』というような態度で記事が出ていたことです。完全に間違った見方でした。

それで、ある朝僕は学校に行かなくてはいけなかったのですが、当時はイタリア移民の区域だったエリザベスストリートに住んでいて、ワシントンスクエアパークにあるNY大学に通ってい単です。それで、朝10時半くらいに、ハウストンストリートを西に歩いて学校に行かなくてはいけなかったのですが、支度をしている時に、”カズン・ブルーシー”というラジオ番組で、『みなさん、ザ・ビートルズが今話題になっていますが、これからNYで初めて、”I Want to Hold Your Hand”という曲をかけます』と言ったんです。だから立ち止まって、聴いて、授業には遅刻してしまいましたが、曲が素晴らしかったのです。しかも、当時彼らの前に、イギリスのポップ・スターが、アメリカに伝わり人気を得るということはなかったのです」

4)プロデューサーのオリビア・ハリスンが語る。
https://x.com/aaakkmm/status/1861413486951030795「この作品を作ると2022年に決めた時に、マーティ(マーティン・スコセッシ)にお願いしなくてはいけないと思いました。彼とアルバート(・メイスルズ)は友人でもあったので、それしかないと思ったのです。映画はすでに何回か観ましたが、いつも驚くのは、彼らはこの時点ですでに経験も積んでいたのに、いかにこの4人が浮かれているのかです。それにびっくりします。彼らはすでにイギリス中で人気もあり、有名たわっていたことなど、あまりにイノセントにも見えるし、喜びでいっぱいで、それがこの映画を観ていて一番感動する部分です。どんなことにも情熱を持ち、興奮できる人達だったんです。だから(アメリカでの)反応に本当に驚いたのだと思います」

「(アルバート&デイヴィッド・メイスルズ兄弟の)この映像は過去にも観たのですが、10年くらい前に映像全部を見せて欲しいとお願いしました。そこで、未公開映像がたくさんあると気付きました。だから、この映画には、未公開映像がたくさんあります。しかも、ピーター・ジャクソンがリストアしたレベルの高画質の映像ではこれまで誰も観たことがありません。彼らがアメリカに来てから、もう随分時間が経過しました。ジョージと私は、NYに来たらよくプラザホテルに泊まったものです。最初に来た時は、『このスイートに泊まったんだよ』と言っていました。面白いものですよね」

5)監督が語る。
「これは、すでに誰もが知る話ではありますが、何か新しいことをこの作品で描けると思いました。まず、アップル・コアが、リストアされた宝物のような映像を送ってくれました。結果この映画には、未公開の17分の映像が使われています。それも、アルバート&デイヴィッド・メイスルズ兄弟が撮影した映像だけではなくて、コレクターが持っていて映像やアーカイブに埋もれていた映像も含まれています。だからきっと予想外の作品になっていると思います。

それからこの映画の視点がこれまでの作品とは少し違っていると思います。ファンの視点にもよっています。1964年は、何もかもが変わった瞬間であり、それが若者にとっては意味があったことだったからです。4人の若者がリバプールからやって来て、最年少は20歳でした。ファンは、10代はじめから20代前半で、世界は彼らのものだったのです」

「この作品にはポールとリンゴの新たに撮ったインタビューが収録されています。マーティン・スコセッシは、ジョージ・ハリソンのドキュメンタリーを随分前に作っていたので、オリビアとは非常に仲が良くなっていましたし、ショーン・レノンももちろん彼らの持っているアーカイブを提供してくれて、しかも情熱を持ってくれていました」

「この作品のライブパフォーマンスは見どころだと思います。もちろんこの映像は見たことはあったのですが、これまでにないような体験になっているのです。今回は、パーク・ロードが映像のリストアして、サウンドは、ピーター・ジャクソンのウィングナット・フィルムズがミックスし、ジャイルズ・マーティンがリミックスしていています。観てもらえれば分かりますが、サウンドが本当に美しいのです。まるで1964年のその場に自分もいるような感じと思います」

映画からの音源もストリームできる。

ザ・ビートルズの”Now and Then”は、グラミー賞のレコード賞と、ロック・パフォーマンスの2部門にノミネートされている。これはAIを使った作品としてノミネートされた初の曲となる。ちなみに、AIを使ったと言っても、ジョン・レノンの声をAIで再現したとかではもちろんなくて、AIを使って、ジョン・レノンが録音したローファイの音源の質を曲として使えるレベルに向上されたということ。しかし、まさか、レコード賞にノミネートされるとは誰も思っていなかった。グラミー賞の発表は、来年2月2日。

また、このドキュメンタリーと同時期にポールが撮影した写真展が日本で引き続き開催中だ。
https://rockinon.com/blog/nakamura/209978
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