ビョークは、米大統領がグリーンランド併合の可能性を示唆する発言を再燃させたことを受け、同地がデンマークから独立すべきだとの主張を改めて表明した。
アイスランド出身のビョークは、インスタグラムにメッセージを投稿。隣国グリーンランドの人々に向けて、1944年にアイスランドがデンマークから独立した歴史を引き合いに出し、デンマーク王国からの独立を呼びかけている。
彼女の投稿はこちら。
ビョークの呼びかけは、米大統領がベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を拘束した後、資源豊富なグリーンランドに対して米軍侵攻を命じる可能性があるのではないかという懸念が高まる中で行われた。また、日曜日に『The Atlantic』誌に掲載されたインタビューでも、米大統領は「グリーンランドは絶対に必要だ。防衛上、必要なのだ」と発言している。
ビョークは「独立を求めて闘うすべてのグリーンランドの人々に祝福を」と書き出し、「植民地主義によって、私はこれまで何度も背筋の凍るような思いをしてきた。だから、仲間であるグリーンランドの人々が、今の残酷な植民地主義から、さらに新たな残酷な支配へと移されるかもしれないーーその可能性を想像するだけでも、あまりに残酷で耐え難い」と続けている。
グリーンランドは1953年までデンマーク王国の植民地で、現在は同国の自治領。人口は約5万7千人で、独立を宣言するための国民投票を実施する権利が認められている。一方で、公共予算の約半分をデンマークに依存し、外交や防衛は現在も同国の管轄下にある。
ビョークのメッセージの全文は以下の通り。
「独立を求めて闘うすべてのグリーンランドの人々に祝福を。
私たちアイスランド人は、1944年にデンマークから離脱できたことに、心の底から安堵している。
おかげで母国語を失うことがなかったから(そうでなければ、私の子供たちは今頃デンマーク語を話していたはず)。
だから私は、グリーンランドの人々に対して、何度でも、強い共感の念を抱かずにいられない。
とりわけ、1966年から1970年にかけて、12歳の幼い年齢の少女を含む4500人の少女たちに、本人の知らぬ間にIUD(子宮内避妊具)が装置されていた強制避妊の問題が明るみに出たときには、彼女たちは私と同世代か、あるいは私より若くて、その影響で現在も子供を持てずにいる。
しかもデンマークは、今でもグリーンランドの人々を、まるで二級市民のように扱っている。
2025年になっても、子供たちを親から引き離しているから。
植民地主義によって、私はこれまで何度も背筋の凍るような思いをしてきた。
だから仲間であるグリーンランドの人々が、今の残酷な植民地主義から、また新たな残酷な支配へと移されるかもしれない、と
その可能性を想像するだけでもあまりに残酷で耐え難い。
úr öskunni í eldinn(灰の中から炎の中へ)、これは私たちアイスランド人が使う言葉。
親愛なるグリーンランドの人々へ。
独立を宣言してください!!!!
隣人として、心からの連帯と祈りを。
温もりを込めて。
ビョーク
リンク:
https://www.theguardian.com/world/2024/mar/04/greenlandic-women-sue-danish-state-for-contraceptive-violation-coil
https://www.theguardian.com/world/2024/nov/25/danish-parenting-tests-baby-removed-from-greenlandic-mother
ビョークは、このメッセージにも添えられている、2007年のアルバム『Volta』収録曲“Declare Indepence”を、グリーンランドおよびフェロー諸島の人々に捧げている。
この曲を2008年に東京で行われたコンサートで披露した際、ビョークはコソボのセルビアからの独立支持を表明し、物議を醸した。
その後、2008年のセルビアのEXIT Festival への出演がキャンセルされる事態となる。当時ビョークは、「きっとセルビアの人が、私の東京公演を観て、家に電話し、それでこのコンサートがキャンセルされたんだと思う」と発言。一方、主催者側はこれを否定し、ビョーク本人および観客の安全を懸念した判断と説明している。
ビョークが言及しているように、デンマークでは公式調査の結果、1960年代から1990年代にかけて、約4500人のグリーンランド先住民女性が強制避妊キャンペーンの被害を受けていたことが確認された。これは人口増加を抑制するための目的で行われたもので、145人の女性が訴訟を起こしている。デンマーク政府はこれを受けて謝罪し、すべての対象者に補償を行うための和解基金を設立すると発表している。
また、「子供たちを親から引き離している」という指摘は、長年問題視されてきた「親としての適格性テスト」を指す。この制度は、グリーンランドの家族に不利な偏りがあるとして、2025年5月に禁止された。ビョークはこれを、グリーンランドの人々を非人間化してきたデンマークの政策の一例だと断じている。この制度によって、多くのイヌイットの子どもたちが親元から引き離され、デンマーク人の里親家庭に預けられてきた。
デンマークのメッテ・フレデリクセン首相は月曜日、グリーンランドとデンマークの双方が、米大統領によるグリーンランド獲得の意向を拒否していると述べ、公共放送DRに対し、次のように語った。
「私はデンマーク王国としての立場を非常に明確に示してきましたし、グリーンランドもまた、アメリカ合衆国の一部になることを望んでいないと繰り返し表明しています」
ビョークの最近の動向として注目されるのは、現在新作を制作中であることが明らかになっていること。
5月30日からは、長年のコラボレーターであるジェームズ・メリーとの大規模な個展を、レイキャビク・アート・フェスティバルで開催予定。その展示の一部は「現在制作中の最新作の音楽に基づいたもの」と告知されている。
また、去年のベストアルバムリストでも高評価を得たロザリアの『LUX』にも参加。
“Berghain”
さらに、ビョークは去年11月21日で60歳を迎え、その日に、ロザリアとの初コラボ曲“Oral"についての投稿している。
この曲は、アイスランドの魚類養殖産業反対するためのチャリティで、投稿はリリースから2周年を迎えたことを記念した感謝のメッセージだ。
「今日は、ロザリアと”Oral”をリリースしてからちょうど2年の記念日。
まず、彼女のあまりにも寛大な行為に対して、個人的な感謝を伝えたい。
!!! あなたはすべて !!!! 本当にありがとう !!
それから、この活動を支えてくれたすべての人たちへ。
これほど多くの人が参加してくれるなんて、私たちの想像をはるかに超えていた……。
ありがとう。
収益はすべて、アイスランドが魚類養殖産業によって覆い尽くされてしまわないよう支援するために使われました。
……自然を守るための、新しい法的環境をつくるために。
いまは『見せて、伝える』時間。
私たちはこれまでに、4つのケースに取り組んできた。
1つ目は、最初に話ししたセイジスフィヨルズルの件。
地元の人々の意思に反して、フィヨルドに魚類養殖場の認可が下りるのを止めるためのもの。
2つ目は、同じくセイジスフィヨルズルにおける、海洋空間計画に関する、より具体的な法的ケース。
3つ目は、西フィヨルド地方ーータルクナフィヨルズルとパトレクスフィヨルズルで起きた、養殖魚の逃亡事故に関するケース。
4つ目は、サンデイリ。
農家の意思に反して建設された養殖場を止めるためのもの。
みなさんの寛大な支援のおかげで、
海や水をより大きなスケールで守ることにつながる、さらなるケースにも取り組み続けることができている。
2030年までに、陸と海の少なくとも30%を保護する
『30 by 30』の目標に到達するために。
これらが、みなさんにとって何らかのかたちで、
ひとつの「模範的なケース」になればと願っている。
この曲を聴くという行為そのものが、
その源を育て続けてくれている。
ぬくもりをこめて
ビョーク」
“Oral”
最後に、ビョークは10月24日、ライブ作品『cornucopia : live』をアナログ盤、CD、デジタルなど複数のフォーマットでリリースしている。