「運命に導かれるように結集したナンバーガールマニアがただただナンバーガールの曲を演奏する、それが新バンドバンナールーガ。初ライブは12/21渋谷club乙。その後のライブ予定はとりあえずありません!」
LUNKHEAD・小高芳太朗のそんなツイートが僕のTLに流れてきたのは11月20日のこと。2002年の札幌ラストライブも実際に観に行ったナンバーガール・リアルタイマーの自分は、その時点から密かに心の中でアップを始めていたのだが、実際にこの日シブヤの地下に響き渡っていたのは、まさしくあのキワキワ感を今に伝える、全身震撼必至の衝撃に満ちたアンサンブルだった。
メンバーとしてラインナップされていたのはこの4人。
・リョウスケ・タカガキ(Dr/ex. chouchou merged syrups.)
・花房真也(Vo・G/SUSAVI)
・三島想平29歳(B/cinema staff, peelingwards)
・小高よした朗(G/LUNKHEAD)
そもそもの発端は渋谷club乙の店長・じゃいあん氏の誕生日企画の一環として開催された「KINOTONITE! -コピバンde忘年会-」。
すでに名コピバンとして各地で名を馳せている糖類零(シュガーレス/Vo・G:TKc、Vo・B:345c、Dr:ピエール吉岡というメンバー表記でどのバンドのコピーかは一目瞭然ですよね)の凄絶な轟音世界に続けて、いよいよバンナールーガが登場!
曲に入る前、花房がテレキャスの6弦をギャウーンとドロップDにチューンダウンした瞬間から、脳内には2002年11月30日の、すし詰め状態の札幌ペニーレーンの景色が勝手にクロスフェードされてくる。1曲目はやはり“I don’t know”! SHURE SM57に向かって叫び上げる花房の歌が「本家」=向井秀徳よりややファニーな以外は、驚くほどにあのナンバーガール・サウンドに迫っている。
普段からナンバーガール好きを公言している三島が、髪振り乱しながら繰り出すゴリゴリの直線的ベースラインは中尾憲太郎そのものだったし、心なしか演奏中のアクションまで田渕ひさ子に寄せていた小高のプレイも音色も、頭も心も痺れるようなあの迫力を備えていた(ちなみにライブ後に聞いた話では、三島のベースポジションはシネマの時より20cm低く、小高のギターポジションはランクの時より20cm高くして、絵的にも「本家」に寄せるべく研究したらしい)。さすがに再現不可能では?と思っていたアヒト・イナザワの爆裂手数ドラムも、タカガキの渾身のパフォーマンスがしっかり「あの感じ」を体現していたのも印象的だった。
この日のバンナールーガのセットリストは以下の通り。
・I don't know
・タッチ
・はいから狂い
・鉄風 鋭くなって
・TATTOOあり
・EIGHT BEATER
・SAMURAI
・BRUTAL MAN
・日常に生きる少女
・OMOIDE IN MY HEAD
・IGGY POP FAN CLUB
“OMOIDE IN MY HEAD”の前に「今日は何月何日ですか? 12月21日? 12月の渋谷は、こんなに暑かったですかね」と札幌ラストライブのMCを引用してみせた花房。
この元になったMCはその後「1995年夏から、我々が自力を信じてやってきたナンバーガールの歴史を、今ここに終了する」に続いていくわけで、「え、これだけガチで仕上げてきたバンド、まさかこれ1本で終わりってことはないよね?」と心がざわつく。
だが、初めて4人でスタジオに入ってからたった2ヶ月ほどだと明かしながら花房が続けた言葉は、「2016年10月から、自力を信じてやってきた、バンナールーガの歴史を……これからも見届けていただきたいと思います」だった。
ラストライブ同様に“OMOIDE IN MY HEAD”“IGGY POP FAN CLUB”で熱演の幕を閉じた4人。その後にメンバーが再び登場してアンコールをやったのも、「あの日」とは違う物語を象徴してたように感じた。
アンコールでは“BRUTAL NUMBER GIRL”、さらに“透明少女”が炸裂! 次のライブがいつになるかは現状まるで不明だが、あのサウンドを実体験した世代も、音源や映像で知っている世代も、あるいはまったく知らない世代も、とにかく一度観てみてほしい。びっくりすると思う、カッコよくて。(高橋智樹)