【全アルバムレビュー:エレファントカシマシ】12th『ライフ』

『ライフ』2002年5月2日発売

「染み入る」という攻め方の一枚

4作目には『生活』というアルバムがあって、そもそも生活というテーマはエレカシの根底を流れているものなのだなということがわかるが、音楽的には『生活』と本作『ライフ』は大きく掛け離れている。前作の『good morning』は大胆にブレイクビーツを導入して宮本浩次のイメージの中にある新しいロックサウンドを追求していたが、本作ではエレカシの燃え盛るような反骨精神がなりを潜め、平熱の生活感の中に思考と感情が行き交う、宮本の私小説的な作風になっている。ロックンロールナンバーの“暑中見舞-憂鬱な午後-”でさえ、声を荒げる場面は終盤までほぼ見当たらない。プロデューサーの小林武史は、さざなみのように立つ心象の歌の数々を丁寧にアレンジするばかりか、作詞面においても協力している。ただ、本作が穏やかでエネルギーに欠けたアルバムかというと、そうではない。生活にはこういった心のさざなみが確実に存在するし、それを的確に描写するという点で、エレカシの表現レンジの広さを伝えた作品だ。(小池宏和)

収録曲:
1.部屋
2.女神になって
3.面影(おもかげ)
4.暑中見舞-憂鬱な午後-
5.普通の日々
6.かくれんぼ
7.秋-さらば遠い夢よ-
8.真夏の革命
9.あなたのやさしさをオレは何に例えよう
10.マボロシ

※『ROCKIN'ON JAPAN』2016年1月号より転載

過去のレビューはエレファントカシマシのアーティストページをご確認下さい。
http://ro69.jp/artist/2218

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