この夏全米公開されヒットした本作が、日本でも今年中に観れてとても嬉しい。というのも、年間ベストで度々1位となっているケンドリック・ラマ―の『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』がリリースされた年でもあるから。
ギャングスタ・ラップの拠点であり、アメリカで最も危険と言われる町コンプトン。差別と偏見、貧困と暴力の連鎖が終わらないこの場所で自分はどう生きていくのか、というリアルで深い葛藤がアルバムでは言及されているが、この映画でも同じテーマがエンターティンメントとして表現されている。それこそ、ヒップホップも、N.W.A.もまったく知らなくても楽しめるように、だ。
ギャングスタ・ラップというジャンルを生み出した伝説的グループN.W.A.――ドクター・ドレ―、アイス・キューブ、イージー・Eらの青春物語として、美談すぎる部分はもちろんあるが、FBIからも通告された“ファック・ザ・ポリス”の誕生秘話や大音量でのライヴ・シーン、警察との抗争など手に汗握る場面も多い。
「ケンドリック・ラマーの歌詞は暴動を煽る」とアメリカでFOXニュースが報道し、本人が反論していたことを観ていて思い出し、いたたまれない気持ちになった。
あれから30年経っても差別や偏見は、そしてケンドリックが歌っている葛藤の本質は変わっていないことが浮き彫りにされている。
楽しいだけの映画ではもちろんない、シリアスで痛々しく、おまえはどうなんだ?と突きつけられる場面もたくさんある。だからこそ音楽ファンなら(いや、そうでなくとも)ぜひ観てほしい。
昨日から新宿・渋谷で先行公開され、来週26日(土)から一般公開される。
ジェットコースター・ムービーみたいな要素もあって、もう一回観たいなあ、と思っていたら、一部映画館では2回観にいけばカン・バッジがもらえるそうです。
『ストレイト・アウタ・コンプトン』
12月19日(土)渋谷シネクイント、新宿バルト9ほか全国順次公開
シンカ、パルコ ユニバーサル映画配給
©2015 UNIVERSAL STUDIOS
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