松村雄策『ビートルズは眠らない』が文庫になった。始まりは、ポール・マッカートニーの初来日

松村雄策『ビートルズは眠らない』が文庫になった。始まりは、ポール・マッカートニーの初来日
松村雄策さんが1991年から2003年までに執筆した、ビートルズとそのメンバーについての原稿をまとめた『ビートルズは眠らない』、
2003年にロッキング・オンから出版した書籍が文庫として刊行された。

1990年3月、ポール・マッカートニーの初来日公演から本書は幕をあける。
このワールド・ツアーを収めたドキュメンタリー映像『ゲット・バック』で、監督のリチャード・レスターが、「たぶん、これが最後のポールのワールド・コンサート・ツアーになるだろう」というようなことを語っていることについて、
なんとかしてもらいたい、60歳のポールの“今日の誓い”を僕は聴いてみたい、と松村さんは書いている。

願いが叶って本当によかった。
60歳と言わず、70代のポールにも会うことができ、そして彼は今年の4月にまた日本にやってくる。

実は、このポールの初来日公演の後、知人を通して初めて松村さんと一緒にご飯を食べた(当時、筆者は大阪の出版社で働いていた)こともあり、個人的にも思い出に残る1冊だ。
ジョージの死、ポールの三度目の来日、そして『レット・イット・ビー…ネイキッド』までが綴られている。


昨年10月9日、松村さんが脳梗塞で入院されたと聞いた時は本当に心配だった。
後遺症のため話すこと、書くことが困難だが、最初はご家族を通して、今はゆっくり時間をかけて、ロッキング・オン本誌の原稿を書き続けてくれている。

「ビートルズは変わっていない」と、松村さんはまえがきで書いているが、
松村さんの原稿も、何があっても変わらない。
自分が10代でロッキング・オンに出会った時も、リハビリ中の原稿も。

14年ぶりに、もう一度、じっくり読みたい。


文庫本になって、サイズと装丁がかわいくなった。

最初に出たオリジナル版の装丁は、ビートルズの武道館公演のチケットが上品にデザインされている。
松村雄策『ビートルズは眠らない』が文庫になった。始まりは、ポール・マッカートニーの初来日

装丁を手掛けたのは、元ロッキング・オン社のADで、当時は独立されていた三浦巌さん。
単行本や雑誌(BRIDGE、BUZZなど)など、私も一緒にたくさん作らせてもらったが、いつも優しくて、いざという時は決断力のある、頼りになるADだった。

2014年、残念ながら51歳の若さで他界された。

凛として潔い、優しさと静かな強さを感じさせるデザインは、三浦さんそのものなので、ここに記しておきたい。

カバーを全部広げると、チケットが見えるようになっている。(井上貴子)
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