2022年に結成20年の節目を迎えるフランツ・フェルディナンドが初のベスト盤、その名も『Hits To The Head』を2022年3月に日本先行でリリースする。2000年代にデビューしたUKバンドがベスト盤をリリースするのは稀(アークティック・モンキーズもカサビアンも出していない)なわけだが、フランツの場合は必然のベスト盤タイミングだったと言わざるを得ない。
何しろ最初から最後までヒット曲が満載、アンセムの交通渋滞が起きているような超充実の内容なのだ。誰もが知る“Take Me Out”だけが突出することなく、5枚のオリジナル・アルバムから常にバンドの代表曲が選出されているのが凄いし、初期のミニマルなポスト・パンクからディスコ、ソウル、ダンス・パンクとどんどん曲の幅を広げつつも、フランツ節とでも呼ぶべきサウンドの軸はまったくブレていないのも凄い。
彼らがそのキャリアを通じて楽しくって、ユニークで、堪らず踊り出したくなるようなポップ・ソングを至上命題に掲げてひた走ってきたことを、改めて実感させられるベスト盤だ。
昨今のUKバンドでフランツほどコンスタントに来日し、日本のファンと確かな絆を深めてきたバンドはいない。それだけに本作収録曲の中には、日本のファンにとって忘れ難い記憶と共に鮮やかに蘇ってくるナンバーも多い。例えばそれは日本武道館を揺らしまくった“Do You Want To”であり、フジロックのヘッドライナーのステージにASIAN KUNG-FU GENERATIONらも乱入して繰り広げた“Outsiders”であり、東京国際フォーラムを総立ちのダンスフロアに変えた“Always Ascending”でもある。いわゆるラジオ・フレンドリーな曲はもちろんのこと、ライブでさらに「化ける」タイプのファン・フレンドリーな曲が多いのも彼らの真骨頂だろう。
2021年10月にはドラマーのポール・トムソンが脱退し、オリジナル・メンバーはアレックス・カプラノス(Vo/G)とボブ・ハーディ(B)のみとなったフランツだが、今回のベスト盤に収録される思いっきりジョイフルな新曲“Billy Goodbye”を聴けば、フランツのフランツらしさはこれからも不変だと確信できるはず! (粉川しの)
フランツ・フェルディナンドの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。