文=坂本麻里子
昨年5月に配信されたバーチャル版グラストンベリー・フェスでお披露目ゲリラ・ライブを決行、瞬時に話題をさらったトム・ヨーク&ジョニー・グリーンウッド、トム・スキナーによる新バンド=ザ・スマイルがいよいよベールを脱ぐ。
同年夏以降、ナイジェル・ゴドリッチがコラボレーターとして参加しアルバム制作も進行中であることを認め、秋口にはジョニーが英NMEに対し「アルバムは仕上がりつつある」と語る等、情報はぽつぽつ流れていたとはいえ、何かと謎の多かったこのプロジェクト。
しかし12月にはInstagramライブでリハーサルが配信され、その約1ヶ月後に公式デビュー曲“You Will Never Work In Television Again”を発表すると共に、1月末におこなわれる初めての有観客ライブ&ストリーミング日程も告知。本格始動のギアが入ったことでレディオヘッドのファンは「アルバム投下も目前?」と新年早々期待で色めき立った。
『ア・ムーン・シェイプト・プール』(16年)とそれに伴うツアーを終えて以来、本家レディオヘッドはバンドとしては休眠中だ。しかしメジャー・レーベルEMIとの契約を消化後、インディのXLに段階移行していった00年代半ば(=トムのソロ『ジ・イレイザー』、『イン・レインボウズ』期)以降の彼らはより柔軟にサイド・プロジェクトに腕を伸ばしてきたわけで、そのスローなペースは不思議ではない。
過去2年を振り返っただけでもトムのブリアル&フォー・テットとのコラボからジョニーの多彩なサントラ仕事、エド・オブライエン初のソロ作まで、(コリン・グリーンウッドを除き)メンバーは各自の嗅覚と音楽道を謳歌している感がある。
レディオヘッドという巨大な存在の圧力から時に離れる自由もあるのは彼らにとってヘルシーな状況に他ならないし、いわば「付かず離れず」な大人の関係を5人は確立したのだな……とばかり思っていた。(以下、本誌記事へ続く)
ザ・スマイルの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』3月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。