ザ・ラウンジ・ソサエティ ―― 鋭いリリシズムと変幻自在のサイケデリア。UKポストパンクの新星に注目!

ザ・ラウンジ・ソサエティ ―― 鋭いリリシズムと変幻自在のサイケデリア。UKポストパンクの新星に注目! - rockin'on 2022年11月号 中面rockin'on 2022年11月号 中面

仕事柄ゆえか、「今気になっている新人バンドは?」と訊かれることが偶にあるが、最近、訊かれるたびに前のめり気味にレコメンしていたバンドがこのザ・ラウンジ・ソサエティだ。デビューシングル“Generation Game”(2020)をリリースした時点でまだ高校生だった彼らは、未だに全員10代という超新星。8月にリリースされた『タイアード・オブ・リバティ』は絶賛成長期の彼らが行き先未定のまま疾走する、デビューアルバムとして最高の一作に仕上がっている。

英ヘブデンブリッジ出身のこのバンドを見出したのはダン・キャリー。フォンテインズD.C.ブラック・ミディウェット・レッグらを手がけ、2020年代UKバンドシーンの最重要プロデューサーと言っても過言ではない彼は、ザ・ラウンジ・ソサエティのグルとして『タイアード・オブ・リバティ』でもがっつりサポートしている。ただしキャリーのプロデュースはああしろ、こうしろと指示して型に嵌めるタイプではない。バンドの眠れる可能性を掘り起こしていくタイプで、そのやり方がザ・ラウンジ・ソサエティの未知数な現在形と見事にシンクロしているのだ。

そもそも彼らは未だバンドの明確な型を持っておらず、リリシズムを容赦なく切り刻むポストパンクから、トリッピーだったりスプーキーだったりするサイケデリック、さらにはブラーを高速回転させたようなブリットポップのメロディまで、本作でも「影を踏まれてたまるか」と言わんばかりのふてぶてしい変容を続けていく。

ちなみに『タイアード・オブ・リバティ』の収録曲は、“Generation Game”(新録&新アレンジ)を除いて全てアルバムセッションで新たに生まれたナンバーだ。過去曲をバッサリ捨て去って進むその様も、「これまで」よりも「これから」が遥かに長く貴重な10代ならでは。

田舎町で生まれ育った彼らの閉塞感や、社会的抑圧への抵抗、コロナ禍で自由を奪われた怒りetc.、アルバムには今にも爆発しそうなマグマが渦巻いているが、近い将来、それがついに爆発した時、ザ・ラウンジ・ソサエティの全貌は初めて明らかになるだろう。まさに目の離せない少年達なのだ。 (粉川しの)



ザ・ラウンジ・ソサエティの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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