いま、もっとも鮮烈なギターロックを鳴らすバンド。そう断言したくなるのがノースカロライナ州アシュビル出身の5人組、ウェンズデイだ。通算5作目で名門インディレーベルのデッド・オーシャンズとサインした初のアルバム『ラット・ソウ・ゴッド』が多くのメディアで絶賛を浴びたことで急速に注目を集めているが、同作は間違いなく2023年のベストアルバムのリストを席巻するだろう。
オルタナティブロックのダイナミズムとカントリーのストーリーテリングを受け継いだウェンズデイは、それらをただ気の利いた新解釈としてではなく、身体と精神をたしかに通過したものとして現在進行形で奏でている。バンドのリードシンガーでありソングライターのカーリー・ハーツマンの鬱屈した感情が、そこではきれいに加工されることなく、むしろ生々しく増幅されるようにして解放されるのだ。
そんなウェンズデイの初来日が2024年3月に決定した。カントリーの枯れた叙情とシューゲイザーの激しさを大胆に行き来するウェンズデイのバンドアンサンブルがライブでこそ真価を発揮するのは間違いなく、これを見逃す手はない。複数のギターとラップスティールによる厚みと奥ゆきのある演奏は、現在の彼らの最大の武器だと言えるだろう。また、オープニングアクトにはバンドのギタリストであるMJレンダーマンのパフォーマンスが決まっている。現在のウェンズデイのサウンドの要である彼のソロも併せて注目したいところだ。
『ラット・ソウ・ゴッド』のハイライトであり、現在のウェンズデイを象徴する8分超えのナンバー“Bull Believer”の終盤、ノイジーなギターが吹き荒れるなかでハーツマンは絶叫する。この曲について彼女は「私がステージで叫ぶ口実」だと説明しているが、ライブで再現されるとき、そこで解き放たれる怒りや悲しみはダイレクトにオーディエンスとシェアされることだろう。そのとき、得難いカタルシスが生まれるはずだ。
これからさらなるスケールアップが期待されるインディロックバンドの、はじめのピークの瞬間をどうか目撃してほしい。 (木津毅)
ウェンズデイの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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