【インタビュー&出演アクト解説】洋楽好きのための新たなるフェスrockin'on sonic 2026――プロデューサー山崎洋一郎へのインタビューと豪華出演アクト解説で見どころを完全網羅!

【第一弾出演アクト解説】


【インタビュー&出演アクト解説】洋楽好きのための新たなるフェスrockin'on sonic 2026――プロデューサー山崎洋一郎へのインタビューと豪華出演アクト解説で見どころを完全網羅!

PET SHOP BOYS
(文=坂本真理子)

今や英マスメディア用語として定着した「インペリアルフェーズ(クリエイティブとコマーシャル双方の面での全盛期)」なるタームは、78年に創刊され一世を風靡したポップ音楽雑誌『Smash Hits』のエディターだったニール・テナントが発明したという。時世を映し出すあだ花でもあるゆえに、刻々と変化するポップミュージック(流行歌)の世界では「栄光は一過性」というニュアンスを含む警句なのだろうが、彼が81年にクリス・ロウと出会い始動させたPSBはそのフェーズを様々にリブートすることで40年以上続いてきた。

スタジオアルバム15作は全てUKチャートのトップ10入り、トップ30シングルは42曲。英音楽史上最も成功した音楽デュオである彼らは「第2次ブリティッシュインヴェイジョン」とも呼ばれたニューポップ〜ニューロマンティクスの爛熟期に登場した。グラムロック(ボウイ&ロキシー)とエレポップ(クラフトワーク、OMD、ソフト・セル他)という具合に影響源はデュラン・デュランやカルチャー・クラブらと同じだが、元々作曲コンビなだけにバンド志向はゼロ。

メイクやチャラいコスチュームとも無縁で、ニール=フォーマル/クリス=高級カジュアルと基本はシック&ミニマル。ヒップホップ〜エレクトロ〜ハイエナジーといったニューヨーク最新動向と共振し(バンド名もビースティ・ボーイズやNYCピーチ・ボーイズらNYC勢に部分的に触発されている)、軸足をモダンな大都市とその動脈であるナイトクラブ文化に据える——つまり彼らは、ロックに代わりダンスミュージックが次なる主流ポップになることを察知していた。

程なくしてイギリスにハウス〜テクノ他のEDMブームが訪れ、その予感は的中する。しかしあくまで「歌ベース」のユニットであるPSBは、一緒に歌える美メロと知的な幅・奥行きを備えた歌詞——元ジャーナリストなだけにニールの観察眼は常に鋭い——に融合することで四つ打ちの快楽をお茶の間に浸透させていく。

ダンス音楽が好きでも、クラブに行くのはしんどい人間もいる。そんな内気なタイプにも優しいこのインクルーシブ性はコンサートにも反映されていると思う。男ふたりが突っ立っているだけじゃ観ても面白くないし、ステージの「余白」が多過ぎる……ということで、彼らはコンセプチュアルなショーを構想。満を持しての初の世界ツアー「Performance」(91年)はミュージシャンを舞台袖に留め、芝居・モダンダンス・衣装替えなどを総動員して歌の物語を描き出す凝った作りになった。

この野心的な「生ポップオペラ」は興行的に赤字に終わったそうだが、それを原型として彼らは全方位対応のショー——耳と目、心と体で楽しめるスペクタクル——をクリエイトしている(ギターバンド編成で「素」を打ち出した02年ツアーは除く)。デザインや映像を始めビジュアル面では様々な前衛/モダンアート作家とコラボを果たしており、大衆的なポップにエッジーな芸術をまんまと忍び込ませながら社会/文化の各所に引かれた領分を越境する様も痛快だ。

そんな彼らも、80年代後期〜90年代初期の快進撃期以降は波風に揉まれた。例えばグランジ/オルタナギターロック人気。すり切れたジーンズ、ラフ&ラウドなロックが「新たなリアル」として再生したこの時期、80年代勢は得てして肩身が狭かったーーかつてシンセが台頭した頃によく言われた「本物の楽器(ギターetc.)を弾かない奴はフェイク」のロジックだ。

しかしイギリスではグランジに対する一種のアンチとしてブリットポップが台頭。英国的なウィットと悲哀に満ちたニールの歌と言葉はスウェードやパルプの世界観に通じるし、ブラー初の大ヒット曲〝ガールズ&ボーイズ〟で見事なディスコミックスを披露。その約30年後にノエル・ギャラガーがPSBにリミックスを依頼したのは、円環がひとつ閉じたようで素敵だった。

「ポップ」という巨大な傘の下に多要素をミックスし、進化し続けるビートやトレンドとも歩調を合わせながらアンセムのカタルシスとバラードの泣き、ユーモアも忘れない——そうやって音楽を通じ世界中に「疑似家族」の輪を広げてきた彼らが、超充実の最新作『ナンザレス』を引っさげて第2回ロキソニに『ドリームワールド:ザ・グレイテスト・ヒッツ・ライヴ』を連れてくる。

“ドリームランド”は「どこかにある、自由で誰もが歓迎される地」に思いを馳せる歌だが、鉄板な名曲で固めたこのショーはそんな夢の国を現出させるはず。プロモ初来日から38年目の来年、早くから熱心なファンが応援してきた日本との絆を再確認するのはもちろん、若いリスナーがレジェンドを実感する意味でも絶好のチャンスだ。

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UNDERWORLD
(文=小川智宏)

もう何回聴いたかわからないし、ライブ会場で踊り狂った夜も数知れない。にもかかわらず、あのシンセのリフレインを聴くと、どうしようもなくテンションがぶち上がり、年甲斐もなく「ヒョー」とも「ヒュー」ともつかない叫び声が口をついて出てしまう。そういう同志は少なくないだろう。アンダーワールドの“ボーン・スリッピー”(正確には“ボーン・スリッピー:ナックス”)というのはそういう曲だ。

この曲がリリースされたのは1995年。つまり今年でちょうど30年ということになるのだが、それほどの長い時間、存在感も機能性も意味も失われず、いっさい陳腐化することなく、人々を踊らせ続けているテクノクラシックは他にないだろう。コード進行かサウンドの構成要素かメロディか、何がそうさせているのかは知らないが、人間を生理的に高揚させる何かが仕込まれているのではないかと思うほどだ。

その“ボーン・スリッピー”が映画『トレインスポッティング』のサウンドトラックに採用され、アンダーワールドは一躍ブレイクスルーを果たしたわけだが、そこに至るまでの彼らの歩みは少々紆余曲折に富んだものだった。カール・ハイドとリック・スミスが結成したロックバンド、フルールがアンダーワールドと名前を変え、ワーナー傘下のサイアー・レコードからデビューしたのが1988年。

2枚のアルバムを出すが鳴かず飛ばずで、彼らはわずか4年でレーベルをクビになってしまう。それから1年の空白期間を経て彼らはシーンに戻ってきたのだが、そのとき、アンダーワールドは以前とはまったく違う姿になっていた。カールとリックにクラブDJのダレン・エマーソンを加えた3人組のテクノユニットへと変貌を遂げていたのだ。彼らは自分たちのインディレーベルを立ち上げ、テクノシーンで頭角を表し、1993年に今も名盤として聴き継がれるアルバム『ダブノーベースウィズマイヘッドマン』をドロップ。その楽曲群は話題が話題を呼び、のちの『トレインスポッティング』での抜擢、そして世界的なブレイクへと繋がっていったのだ。

それから30年、ダレンの脱退や各自のソロ活動など時期によって活動のペースにはムラがあるものの、彼らは未だテクノ界の巨人として君臨し続けている。2012年のロンドン・オリンピック開会式では音楽監督を務めるなど、イギリスを象徴するアクトのひとつだ。

そういう意味では紛れもなく大御所中の大御所となったアンダーワールドだが、一方でカールもリックもずっと現場主義を貫き続けている。もちろんテクノはフロアで鳴らしてなんぼな音楽なわけだが、カールは御年じつに68歳(見えない……!)。リックも66歳となったが、定期的に新曲を生み出し、ギグを行い、世界中のクラウドを揺らし続けているのだ。

それは日本も例外ではない。というか、カールも「日本は第2のホームだ」と公言するほど、日本のファンは彼らの来日を常に歓迎してきた。初来日は1994年のリキッドルーム。その後、彼らは幾度も日本でライブを行ってきたが、そのなかには今や伝説とされるステージも数多い。

とりわけレイヴパーティやフェスティバルでの彼らの求心力というか、彼らがいることによる安心感たるや。1999年以来たびたび出演してきたフジロック、RAINBOW2000、エレクトラグライドにサマーソニック……テクノイベントでもロックフェスでも余裕でヘッドラインを張れるアーティストはアンダーワールドくらいのものだろう。

なぜそんなことが可能なのかといえば、彼らがとんでもなく切れ味の鋭いダンスアクトであると同時に、とんでもないエンターテイナーでもあるからだ。とくにフロントパーソンとしてのカール・ハイドは、問答無用のロックスター。激しく踊りながら歌う彼の姿は、テクノだとかロックだとか考えるのがバカらしくなるくらいにキャッチーでフレンドリーでクールである。

一時期少しインターバルが空いたこともあったが、2022年に5年ぶりの来日を果たすと、昨年にはSONICMANA、サマーソニック大阪で再来日。今回のrockin'on sonicは、わずか1年5ヶ月ぶりでの来日公演となる。昨年秋にニューアルバム『Strawberry Hotel』をリリースしたばかりとあって、まさに現役最前線バリバリのアンダーワールドを観ることができる絶好のタイミングなのだ。新曲もふんだんに入ったセットリストをアクチュアリティ全開で繰り広げつつ、最後はきっちり“ボーン・スリッピー”で大団円。幕張メッセが爆発する様子が今から目に浮かぶ。ヘッドライナーを務めるPSBとの相性も説明不要、今からちゃんと身体を整えて、踊り狂う準備をしよう。
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