【ライブレポート全文掲載】rockin'on sonic 2026、新年早々フロアを熱く盛り上げたアクトたちを徹底ライブレポート!

【ライブレポート全文掲載】rockin'on sonic 2026、新年早々フロアを熱く盛り上げたアクトたちを徹底ライブレポート!

大好評だった昨年を受けて、待望の2年目の幕を開けた「rockin’on sonic 2026」。「2026」を銘打ったのはフェスを続けていく決意の証であり、その重要な年に相応しい豪華ラインナップと共に迎えた1月4日……だったが、ロキソニはヘッドライナーの当日キャンセルという、大ピンチに立たされることになった。不可抗力とは言え、ペット・ショップ・ボーイズの「Dreamworld」再現を楽しみにしていたファンのショック、会場に走った動揺が、この日を暗転させてもおかしくなかったはずだ。

しかし同時に、ピンチは多くの前向きなハプニングをも生んだ。新星ニーキャップやジャスト・マスタードの未知数を起爆剤とし、ウルフ・アリスやブロッサムズのアリーナクラスのスケール感に圧倒され、急遽決まったアンダーワールドの80分セットに歓喜して踊り、トラヴィスの普遍的な歌と共に迎えるエンディングに感極まった私たちは、予想とは違うかたちで、今年もロキソニの楽しさを身体の芯から体感できたのではないか。

フェスにピンチやハプニングは付き物だ。これからも続いていくならなおさらだろう。それでもロキソニが洋楽リスナーにとって唯一無二のフェスであること、来年も、そのまた次の年も必ず再会を約束するに相応しい場所であることを、改めて確信した一日だった。(粉川しの)



【ライブレポート全文掲載】rockin'on sonic 2026、新年早々フロアを熱く盛り上げたアクトたちを徹底ライブレポート!

under world
(文=小川智宏)

残念ながらペット・ショップ・ボーイズがキャンセルになってしまった結果、もちろん後に控えるトラヴィスはいるものの、メインステージのラストを背負って立つこととなったアンダーワールド。もちろんそこはアンダーワールドなので何の心配もないわけだが、それに加えて、ライブが始まる直前、プロデューサ—山崎から、交渉の結果、当初の予定より20分延長した80分のセットでパフォーマンスしてもらえることになったとアナウンスがあった。さすがカール・ハイドとリック・スミス、サービス精神の人である。

というわけでボーナス込みでのロングセットとなったアンダーワールドのステージは、とにかくキレキレで、過去に何度も観てきたなかでも出色といっていいクオリティだった。オープニングは “Dark And Long (Dark Train)”。舞台袖からカールとリックが登場し、一気にフロアは沸騰。原曲よりもビートを強調したエディットで、散々引っ張った挙句に鳴り響いたあのシンセリフが、ギャラクシーステージの空間を一瞬で巨大なディスコに変えていく。

さらにそこに“Two Months Off”、“Cowgirl”と畳み掛けられるアンダーワールド・クラシック。大量のスモークがステージを満たすなか、前に出てきたカールが踊っている。てっきりもう少しニューアルバムに寄せたシックなモードで来るのかなと思っていたので、これは嬉しいサプライズだ。もっとも、シックというのも単にアルバムを聴いた印象であって、その後披露された“and the colour red”なんか完全にフロア仕様にカスタムされていたわけだが(結果的に『Strawberry Hotel』からのトラックはこの1曲のみだった)。

とにかく曲がつながっていくたびに、ブレイクやドロップが訪れるたびに、オーディエンスの熱狂は積み上げられていく。急遽セットを伸ばしたはずだが、ステージが描き出すストーリーは余裕でパーフェクトである。映像や照明の演出も見事にアップデートされていて、今っぽさとレトロ感と、両方のいいところを総取りしながらすべてを巻き込んでいく。

シチュエーションゆえか、それともバンドのモードがそういう感じなのか、いつも以上にビートの効いた完全テクノ仕様のステージはストイックといっていいほどのもので、年齢やキャリアを考えてもこのアクチュアリティははっきりいって異常だ。だが、それを当たり前のようにやり続けてきたのが彼らであり、そのセンスは2026年を迎えた今も鋭敏なままであることを、ステージ上の2人は身をもって体現していくのである。

“KITTENS”や“Border Country”の分厚くてダイナミックなサウンドが高揚をノンストップで加速していくなか、インタールード的な役割を果たす“Arpeggio12”から“Pearl’s Girl (Tin There)”へというトランシーな展開へ。嵐のような音でフロアを熱狂させると、一瞬の静寂を挟んで”MOANER“へと入っていく。いよいよクライマックスが近づいているようだ。

“MOANER”が終わると、カールによるこの日唯一のMC。「調子はどう?」とオーディエンスに問いかけると、「雪の中でこの曲をやったことはないけど、暑さの中でも、桜の季節にもやった。あらゆる季節でやってきた。すばらしいことだ」という言葉に合わせて “Born Slippy (Nuxx)”が鳴り響いた。今年30周年を迎えたアンセムがハイライトを生み出す。予定外のこともあった一日だが、この曲があればすべてOK。そう思える光景だった。


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Travis
(文=粉川しの)

まさかrockin’on soinic 2026のトリをトラヴィスが務めることになるとは、ほんの数時間前には誰一人思っていなかったわけだが、私たち観客は皆思ったはずだ。トラヴィスでフィナーレを迎えることができて、本当に良かったと。フェスの多幸感と、楽しかった一日の終わりのセンチメントが入り混じったメッセの空気を柔らかく抱きしめるように、トラヴィスは永遠の瑞々しさを湛えて、この日も私たちの傍にあった。

インタビューで彼らも言っていたように、トラヴィスは会場の大小やフェスの出順のような外的環境に、一切左右されない音楽をやっているバンドだ。フランは「全曲ペット・ショップ・ボーイズでやろうか?」なんて冗談を言いつつ“ウェスト・エンド・ガールズ”を鼻歌していたが、蓋を開けてみればいきなりの“シング”で始まったこの日のステージは、美メロに次ぐ美メロに酔いしれ、共に歌う、珠玉の名曲で彩られたいつも通り素晴らしいライブとなった。

何度も練習したらしき「アケマシテ、オメデトウ!」の挨拶を合図に、“ドリフトウッド”、“ライティング・トゥ・リーチ・ユー”と『ザ・マン・フー』の代表曲を惜しみなく披露する流れの中で、会場が瞬く間に一丸となっていく。コンスタントに来日を重ねてファンベースを築いてきた彼らは、流石に乗せ方をよく分かっていて、ぎっしり埋まったメッセに自在にウェーヴを出現させる手練ぶりだ。「懐かしい曲をやるよ」と“グッド・フィーリング”が投下されると、軽快に跳ねるピアノと一緒に心も躍る、まさに最高の気分! トラヴィスのライブに参加すると、晴れやかな気分で明日を迎えられるのだ。

しかし、それは彼らの音楽が能天気だからではない。例えば“サイド”の窒息しそうなイントロや、メランコリィの結晶としてのフランの歌声、ダギーのボディが傷だらけのベースが弾き出す、地面にめり込むようなリズムといった暗さ、重さもトラヴィスの重要な要素だ。また、冒頭“シング”のバンジョーを皮切りに、エレキ、アコギと目まぐるしくスイッチングしながら弾くアンディは、彼らの柔らかな旋律に、常にひと匙の緊張感を加えていく名プレイヤーでもある。

トラヴィスの美メロは常時ぬるま湯に浸かって弛緩したものではなく、凍えた体をじんわりと温めていく、というプロセスが宿っていることこそが肝だ。今でこそ「いい人」の代名詞になっている彼らだが、『インヴィジブル・バンド』の頃のフランはピリピリと神経質で、「難しい人」との評判もあったように、そうした二面性、陰陽のコントラストが、エバーグリーンと称されるトラヴィスの音楽を、より鮮やかに際立たせているのだ。

普遍的な愛のメッセージを込めた“クローサー”の一方には、「いじめっ子へのファックユーの歌」だという“Gaslight”がある。ずっと繊細な歌声をキープし続けるフランも、客席に飛び降りて汗だく&もみくちゃになっているフランもいる。非現実的なほどの美が、現実的な日々に宿る。それがトラヴィスの唯一無二なのだと、4人がぎゅっと寄り添って歌う“フラワーズ・イン・ザ・ウィンドウ”に改めて感じる。

「フェスを一緒に作り上げた全てのアーティストとスタッフ、そしてここにいるみんな」への感謝を伝える役割も、だからこそ彼らに相応しい。ラストはもちろん“ホワイ・ダズ・イット・オールウェイズ・レイン・オン・ミー?”、フラン曰く「僕らの古い伝統」に則って会場全体がジャンプ! こんな風にして始まる2026年も悪くないと思った。

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Wolf Alice
(文=粉川しの)

“ブルーム・ベイビー・ブルーム”ほどウルフ・アリスの新しい物語の始まりを高らかに告げるに相応しいオープナーはなかっただろう。勇ましいピアノで幕開けるイントロから、転調に次ぐ転調でバロックとグラムとハードロックを横断し、「ビョークとスティーヴィー・ニックスの奇跡のフュージョン」と評された、エリーのボーカルが囁き、唸り、叫ぶ。プリミティブなエナジーと構築性が両方求められるだけに、ライブでの再現は相当に難しいナンバーだが、ツアーも後半に差し掛かってのロキソニのステージで、彼女たちはそれを完璧にやってのけてしまった。

そんなオープニングで、前回の彼女たちとは全く別次元のバンドであることが明らかになる。昨年のUKロックを象徴する傑作、『ザ・クリアリング』のナンバーを中心に据えたセットでは、その後もトライバルなビートに乗せてグングン加速していく“ホワイト・ホーシズ”、もろにフリートウッド・マックなグッドメロディが、そよ風に乗って広がるような“ジャスト・トゥー・ガールズ”と、かつてなくポジティブなエネルギーに満ちたパフォーマンスが続く。レオタード&グリッターなアイメイクのエリーは、比喩的にも物理的にもキラキラしていて、現行のインディーシーンで今、これほどアイコニックなスターもいないだろう。

かつてのウルフ・アリスはシューゲイズやグランジからの影響や、北ロンドンのエッジーなシーンと関連づけられる、冷ややかでダークなオルタナロックをやっていた。しかし、70年代ロックのスケール感や、ソフトロックの職人技のメロディに惹かれるようになったという彼女たちの現在地は、どこまでも温かくカラフルだ。それがメンバー全員30代に入り、人間としての成熟を見つめ始めたバンドにしっくりと馴染んでいるのだ。

喉の奥まで大きく開放して歌い始めたエリーの歌声は、高音の美しさに加え、ストーリーテラーとしての彼女の才能にもドライブをかけている。「どこにも行けない」閉塞感と、「どこにも行かなくていい」安堵感で宙ぶらりんになった人生を歌う名曲、“ザ・ソファ”の繊細な感情の襞は、今の彼女だからこそ歌えるものだと感じた。だから、久しぶりの再会という感慨は殆ど湧かず、代わりに未知のカッコいいバンドに出会ったような興奮に、支配されっぱなしの45分間だった。
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