日経ライブレポート「パティ・スミス・アンド・ハー・バンド」

4年前、フジロックフェスティバルのバックステージで見かけたとき、パティ・スミスもおばあちゃんになったなという印象を持ち、何か感慨深かったことを覚えている。しかしこの日のステージで髪をふたつ結びにし、クルクルと回って踊っている彼女はまるで少女のようだった。それを観ながら、表現者としてのパティ・スミスから少女性が消えることはないのだと思った。

8年ぶりのオリジナルアルバム『バンガ』は力強い作品だった。世界を旅し、それぞれの地で思ったこと、感じたことが曲のテーマになっている。当然、世界に存在する多様なテーマが扱われているのだが、その根底を流れているものは一貫している。それは危機感ということだ。世界や人間が向き合っている危機、それを彼女はいろいろな角度から作品にしてみせた。日本の震災をテーマにした“フジサン”もそうだ。

このアルバムがあるから、今回のライヴはいいものになるという確信があった。彼女が自分が歌うことの必然を、より強く感じていることがアルバムから伝わってきたからだ。期待通り力強いパフォーマンスだった。和太鼓と共演した“フジサン”や新作からの曲だけでなく、たくさん歌われたキャリア40年の中の代表曲も、2013年の今のリアルを持っていることが改めて聴く側に伝わってきた。ラストに歌われた“ピープル・ハヴ・ザ・パワー”も、最新作のテーマとしっかりつながったメッセージになっていた。

1月23日、渋谷AX
(2013年2月13日 日本経済新聞夕刊掲載)
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