会場をバーに見立ててオリジナル曲とカヴァーを披露するコンセプトライヴ『Ken’s Bar』の15周年記念アルバム。松浦晃久による柔らかなピアノ伴奏に彩られた福山雅治の“家族になろうよ”。平井堅の歌声によって原曲が元々帯びている独特な湿度が一層劇的に高まっている長渕剛の“順子”。狂おしい歌声と石成正人によるクリーントーンのエレキギターが絶妙に融け合うサザンオールスターズの“いとしのエリー”……などなどJ-POPの他、ロバータ・フラックとのデュエットで酔わせてくれる“KILLING ME SOFTLY WITH HIS SONG”、亀田誠治のベースが猛烈に渋いジャニス・イアンの“Love Is Blind”、日本語訳詞によるスタンダードナンバー“マイ・ウェイ”といった洋楽カヴァーも痺れる仕上がりだ。ホーンを交えたジャズアレンジを施したジャミロクワイの“Virtual Insanity”の艶めかしさも堪らない。ヒネリが利いた選曲も飛び出すなど、その他にも聴き処が満載の本作。いい歌、いい演奏、いい楽曲が揃えば、生まれるのは絶対的幸福。そんなことを心底思わせてくれる1枚だ。(田中大)