正真正銘ファイナル・カット

ピンク・フロイド『永遠(TOWA)-Deluxe BD Version-』
発売中
Blu-ray+CD
ピンク・フロイド 永遠(TOWA)-Deluxe BD Version-
これはすごい。前作『対(TSUI)』から20年ぶりオリジナル作にしてラスト・アルバムとされる今作の4楽章・18曲の中で、ヴォーカル・トラックは“ラウダー・ザン・ワーズ”1曲のみ。ホーキング博士の語りなども部分的にフィーチャーしつつ、あとはすべて『対(TSUI)』セッション時のテイクの再構成&ギルモア&ニック・メイスンによる追加テイクから成るインストで構築されたその楽曲群の、ハイブリッド・ブルースの輝度とスケール感でもってサイケデリックの闇の奥底まで照らし出してみせるような、圧巻の精度と迫力を持ったサウンドスケープ。全編で美しく泣きまくるギルモアのギター・ソロはもちろん、虚空を響かせるような故リック・ライトのキーボードの質感、タフな包容力に満ちたメイスンのドラム……ロジャー・ウォーターズ脱退以降30年近く続いてきた「ギルモアの歌&ギターという『表層』を軸とした今のフロイドの存在意義は?」という風潮を綺麗さっぱり引っくり返し、むしろロジャー・ウォーターズの思想性のほうが「表層」だったのでは?と思わせるに十分すぎるほどの存在感を、今作の音像は確かに備えている。(高橋智樹)
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