歪な道を、まっすぐに進んだ4人の軌跡

クリープハイプ『一つになれないなら、せめて二つだけでいよう』
2014年12月03日発売
ALBUM
クリープハイプ 一つになれないなら、せめて二つだけでいよう
クリープハイプの歌にはいつも、尾崎世界観の斜に構えた態度とひねくれた視線が深く染み付いていた。だから、尾崎の自分も相手も傷つけてしまいそうな尖った声も性急なビートも前のめりなグルーヴも、やけっぱちで儚く、繊細に聴こえたのだ。愛というものは何なのか、どうして人は分かり合えないのか、大切なものこそ自分から離れていくのはなぜなのか――そうやって悩んでもがく姿が、1曲1曲に鮮明に刻まれている。そんな彼らは、今作で大きく変わった。シニカルさを脱ぎ捨て堂々巡りの自問自答から抜け出し、言葉もメロディも素直にまっすぐに生み出すようになったのだ。この12曲には、喜び、愛しさ、怒り、虚しさ、そしてその間にある色んなものが入り混じったゴチャゴチャした感情が、ありのままに鳴っている。同じ世代に向けて作ったという“二十九、三十”で、尾崎は《あーなんかもう恥ずかしい位いける様な気がしてる》と本音を吐きながら、《前に進め》と声高に歌ってこのアルバムの幕を引く。尾崎がずっと守り続けてきたクリープハイプというバンドは今、自分以外の誰かに向かって、強くて優しくなった歌を歌っている。(若田悠希)
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