ギター・サウンドとビートの全能感そのもののミドル・ナンバー、“セイント・セシリア”が放つ強靭な訴求力！ 沸き立つ衝動をスリリングな歌メロとビートの両面で全開放してみせた“ショーン”のダイナミズム！ 5曲入り無料配信EPという形で「最高のフー・ファイターズ」を自ら高々と掲げるかのような今作。ラフ&タフな音像の隅々にまでフーファイの荒ぶる魂がでっかく渦巻いている、圧巻の作品だ。

今作はそもそも、アメリカのロック史の真髄に触れた体験を結晶した『ソニック・ハイウェイズ』とそのワールド・ツアーの大団円を迎えるにあたって、フーファイからのロックンロールの福音として制作されたものだった。が、2015年11月13日のパリのテロ事件によって「このプロジェクトはまったく違う色合いを帯びてしまった」（デイヴ・グロール談）。しかし同時に、「この曲が、どんなに小さな方法でも良いから、この暗い世界で光になってくれたら嬉しい」とコメントしていたデイヴの想い以上に、今作のサウンドと咆哮は、人間の根源的な願いと希望そのものとして胸に響く。ロック・バンドの真の強さとは、こういうことだ。（高橋智樹）