アニコレの作品では過去、新曲はライヴで練り上げた上で録音する、という方法が採られてきたが、今度の新作ではそれが封印されている。今回のレコーディングでは何より新鮮なフィーリングを大事にしたそうで、彼らが今作の参照点として初期のビートルズやラモーンズの作品を挙げているのが興味深い。はたして、そのサウンドはリラックスしていて開放感に溢れ、逆にスタジオ・ライヴを録音したようだったノイジーでカオティックな前作『センティピード・ヘルツ』と比べると、耳触りはルーズでミニマムともいえる。音の隙間をパーカッシヴに跳ね回るカラフルなビートは、ファンには『フィールズ』や『ストロベリー・ジャム』の頃を思い起こさせるかもしれない。加えて、今作を聴いて耳を奪われるのはデイヴとノアによる多彩なヴォーカル・ワークだろう。本アルバムは、この2人で制作した2004年の『サング・トング』と並ぶ屈指のヴォーカル・アルバムといえる(※今回はジョシュを除く3人)。白眉はメインストリームのポップやR&Bと並べても遜色のない華を感じさせるM7か。逆に今作がライヴではどう再現されるのか楽しみ。(天井潤之介)