好きなアーティストはたくさんいても、信じられるアーティストって少ないんじゃないだろうか。そんな持論を持つ私の中で、柴田隆浩という人間は間違いなく後者だ。光に押しつぶされそうだった日、明日には何かが変わるって信じなきゃ乗り越えられなかった夜、もういいと投げ出したつもりが、最後の最後で手を離せなかったあの瞬間。情けなくて誰にも言えないあの日々を、柴田はいつでも真正面から歌ってきた。惨めで不器用でどうしようもない、それでも踏ん張って生きるしかなかったあの日々を、ちゃんと叫び上げてくれた。忘れの歌は完璧な柴田の主観だけれど、ずっとずっと普遍的な感情、「私の歌」を歌ってくれていたと私は思う。そんな柴田への信用を再確認できる盤であり、それは同時に、なんとか生き抜いてきた「私」を認めてあげることでもある気がするのだ。（林田咲結）
