これこそ音響の快楽

水曜日のカンパネラ『SUPERMAN』
2017年02月08日発売
ALBUM
水曜日のカンパネラ SUPERMAN
前作『UMA』は半数以上の曲が海外のトラックメイカーとの共作だった。今作は全曲ケンモチヒデフミのオリジナル曲によるフルアルバムである。

音楽的な個性やパターンはある程度確立されている人たちだけに、画期的な大変化はない。EDMからダブステップ、R&B、シティポップス、エスノトライバルな辺境音楽など時流を意識しながらも、これまでの彼ららしいソリッドで快楽度の高いテックハウスを今回もしっかりと聴かせる。いつもながらトラックの完成度は異様に高く、音圧が高くクリアで分離のいいハイファイ録音と、切れ味のいいトラック、独特な譜割、コムアイの舌足らずなのに滑舌のいいボーカルの相性は抜群で、彼らの音楽の音響的な快楽の部分に惹かれるぼくのような聴き手には抗しがたい魅力がある。古今東西の歴史上の人物をモチーフに妄想が増殖するリリックも相変わらずアイデア豊富で、“世阿弥”の《藤若ちゃん藤若ちゃん藤若ちゃん藤若ちゃん藤若ちゃん見に/能楽堂能楽堂能楽堂能楽堂能楽堂の》という独自の言語感覚はこの人たちにしかできない。(小野島大)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする