心の揺らぎそのもののロックアート

My Hair is Bad『運命 / 幻』
発売中
My Hair is Bad 運命 / 幻
「同じ場面とストーリーを男女それぞれの視点から2曲で描く」という方法論自体は、決して独自の発明ではないが、自分自身とその表現世界が持つ「揺らぎ」を残酷なくらいに冷徹に客観視することによって、椎木知仁(G・Vo)という人の世界観が最大限の高精細感と凄絶なまでのポップ感を獲得するに至ったというのは、紛れもなくMy Hair is Badにとってダイナマイト級の発明だろう。

11月に控えたニューアルバムからいち早くドロップされた両A面シングル。エモーショナルな激走アンサンブルとともに《きっと終わりだった/ずっと分かっていた》と葛藤を押し流すように絶唱する男性目線の“運命”。《悲しみや疎ましささえ/美しく化けてしまったね》と振り切れない想いを女性目線から綴った珠玉のバラード“幻”。両サイドの立場から「指輪」をフィーチャーしてみせる手法には、まさにそれだけで1本の映画が生まれても不思議ではない感情の情報量が凝縮されていて、何度聴いても衝動のマグマに胸を突き上げられるような感覚に襲われる。アルバムで彼らは一体どこまで昇り詰めるんだろう?(高橋智樹)
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