スタンダードの魅力

リンジー・スターリング『ウォーマー・イン・ザ・ウィンター』
2017年11月08日発売
「踊るヴァイオリニスト」リンジー・スターリングの4枚目のスタジオ・アルバムとなる今作は、冬のリリースということで、クリスマス・ソングを中心に冬らしい楽曲が収録された。マライア・キャリー“恋人たちのクリスマス”のカバーや、クリスマス・キャロル、オールディーズなどこの季節に馴染み深い曲を、軽やかで華やかなアレンジで聴かせる。

今まではクラシックmeetsエレクトロという手法で、ビートの効いた曲を中心にした「踊るヴァイオリニスト」そのものといったサウンドだったが、今回はビッグ・バンドやオーケストラ・アレンジでゴージャスな内容だ。トロンボーン・ショーティが参加したタイトル曲、オール・タイム・ロウのアレックスをフィーチャーした“Time To Fall In Love”、サブリナ・カーペンターやベッキー・Gといった若手シンガーを起用した曲など、ゲストも迎えて、心躍るような、あたたかく多幸感が満ちる生楽器のアンサンブルを響かせる。モダンでダンサブルなアレンジや躍動感は彼女の持ち味ではあるけれど、スタンダードな曲が持つ物語性や神秘的な叙情性をヴァイオリンでまっすぐに紡ぎあげる想像力や表現もまた美しい。(吉羽さおり)