大げさな絵空事や借り物のスペクタクルに頼ることなく、目の前にある風景のひとつひとつを丹念に織り重ねてエモーショナルなロック青春冒険物語として描き上げてみせる、札幌発4ピース＝The Floor。コンパクトながらピカピカに磨き上げられた音のボディと、軽快な足回りのアンサンブル＆リズムワークで、聴く者すべての喜怒哀楽の先の先へとかっ飛ばしてみせるその楽曲世界に、ササキハヤトの淀みないボーカルが爽快なまでのドライヴ感と普遍性を与えていく――という独特のロック感とポップ感が、メジャー1stアルバムとなる今作では格段にクリアに揺るぎなく提示されている。

初めてステージに立つ不安と奮い立つ衝動をまっすぐに焼き込んだ“18”。夜の公園の孤独感をアリーナ級の高揚感へと昇華した“イージーエンターテイメント”……USインディーロックなど幅広いバックグラウンドの限りを尽くして、歌とメロディを伝えるために自らの音楽を全力でカスタマイズする彼らの闘いの道程はきっと、でっかい歓喜の次元へと通じているはずだ――と予感させるには十分すぎる1枚だ。（高橋智樹）