遠くまで行けそうなポテンシャル

羊文学『オレンジチョコレートハウスまでの道のり』
発売中
羊文学 オレンジチョコレートハウスまでの道のり
これが2ndEPとなる新進の3人組バンド、羊文学。1曲目が“ハイウェイ”と題されているのだが、『オレンジチョコレートハウスまでの道のり』は高速でぶっ飛ばすぜというような疾走感をみせる内容ではない。走ってはきたけれど行先がはっきりしているわけではないという不安や戸惑いが、収録された4曲から伝わってくる。平均年齢20歳の若く瑞々しい心情が音になっている。特に”ブレーメン”の曲進行におけるドラムのパターンの変化は、詞にあらわれた心の滞り、わだかまりと呼応しているようで聴き入ってしまった。

すべての曲を書く塩塚モエカ(Vo・G)は、ギターをかき鳴らしつつ、濁りのない歌声を響かせる。淡々としているようでいて、どこかメランコリックで不思議と開放感もあるボーカルとメロディだ。彼女の詞とバンドのアレンジが一体となって、行先未定の焦燥感を表現している。メンバー交代でドラムの福田ひろ、ベースのゆりかが加入し現在のトリオになったというが、いい組みあわせだと思う。これから遠くまで行けそうなポテンシャルを感じさせるバンドだ。(遠藤利明)
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