希望に満ちたノスタルジー

くるり『その線は水平線』
発売中
くるり その線は水平線
若い頃は周りが思う「その人らしさ」と、その人が目指す自分がうまく一致しなかったりもするが、年齢を重ねるにつれてそれを素直に受け入れられるようになったりする。くるりもそういう時期に来ているのだろうか、“その線は水平線”を聴いた時に、これは紛れもなく私たちが愛してきたくるりらしさそのものみたいな曲だと思った。ノイジーなギターに、ゆったりとしたリズムが重なって、ふんわりとしたメロディが景色を運び、壮大な物語を描き出す。この旋律は地平の彼方まで掴もうとしている。なんてきらめきのある美しい曲なんだろう。

岸田繁のセルフライナーノーツによれば、もう何年も前からこの曲のデモ音源はあったそうだ。そしてこの曲とのリンクを感じて20年前にデモ音源を録った“春を待つ”も完成させ未発表の新曲として3月21日発売の7インチアナログ盤に収録される。単なるノスタルジーなどではない。くるりの楽曲から感じるノスタルジーはいつだって普遍的で、空と海の境目に溢れ出す光のようにほんの少しの未来を感じさせるものなのだ。それが今、くっきりとわかる。(上野三樹)

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