昨年12月、amazarashiの秋田ひろむが行った初の弾き語りワンマンライブの映像である。その翌週にリリースされた『地方都市のメメント・モリ』からも演奏されたほか、まだこのライブでしか披露していない未発表曲“夕立旅立ち”も含んだ内容だ。amazarashiの豊川真奈美（Key）がピアノとコーラスで一部参加するほかは、秋田が自分のアコギのみで歌う。バンド形式のライブの時と同じく、ステージ前には透過スクリーンが張られているが、文字や映像による演出は控えめ。『理論武装解除』と題されている通り、演出で武装するのではなく、生、素を伝えるライブになっている。

とはいえ、相変わらず秋田の顔は暗がりのなかにあって、目鼻がわからない。短編小説のように物語性や情景描写に優れたamazarashiの曲それ自体に集中してもらいたい。歌っている本人より、歌の主人公の感情を聴きとってほしい。そんな狙いをつきつめたライブだ。孤独、焦燥感、希望。最後に歌われる“僕が死のうと思ったのは”と“悲しみ一つも残さないで”など、特にこの形式ならではの生々しさで迫ってくる。（遠藤利明）