トータルな創造性で描く恋の物語は、まさに白いベイビーフェイス

チャーリー・プース『ヴォイスノーツ』
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ALBUM
チャーリー・プース ヴォイスノーツ

『ワイルド・スピード SKY MISSION』で、他界したポール・ウォーカー(ブライアン・オコナー役)を弔うように歌われたウィズ・カリファのテーマ曲“シー・ユー・アゲイン(feat.チャーリー・プース)”が脚光を浴び、一躍スターの座に就いたチャーリー・プース。本作は彼の2枚目となるアルバムで、リリース初週にUS/UKチャートでいずれも4位と、前作を凌ぐ記録を叩き出している。2017年春のシングル“アテンション”以降は男女の恋のすれ違いの物語を楽曲にしたためており、物語の時系列に沿って“ハウ・ロング”、“ダン・フォー・ミー(feat. ケラーニ)”、“チェンジ(feat. ジェイムス・テイラー)”が順次発表されてきた。つまり、それらの先行曲を含む『ヴォイスノーツ』は、ひとつの恋の物語を纏め上げてみせたドラマティックなアルバムなのだ。

何よりも卓越した美声でリスナーを振り向かせてきたチャーリー・プースだが、新作では物語形式を取り入れたほか、セルフ・プロデュースにより音楽的にも新しい試みを見せている(あまりの仕事量に、一旦はリリースが延期された)。かつての彼は、デビュー曲“マーヴィン・ゲイ(feat. メーガン・トレイナー)”でレトロなモータウン色を打ち出したりしていたけれども、本作では80年代末〜90年代前半のブラック・コンテンポラリーの意匠を全編で取り入れている。思い出されるのはジャム&ルイスやベイビーフェイスらが手がけた軽快なリズムとキャッチーなメロディの融和だが、歌声の素晴らしさだけでなくソングライティングがすこぶる高品質。全曲をシングル・カットできてしまいそうなほどである。アルバム中盤の“イフ・ユー・リーヴ・ミー・ナウ(feat. ボーイズⅡメン)”は、必然のコラボと呼ぶべき嵌り具合だ。

現在、この手のサウンドの担い手と言えば第一にブルーノ・マーズだけれども、ブラコン全盛の時代に思春期を過ごしてきた今のアラフォー世代は社会でそれなりの力を持ち、懐古趣味も含めてブラコン派生のサウンドを支持しやすい傾向がある。少し穿った見方をすれば、1991年生まれのチャーリー・プースはノスタルジーでこのサウンドを生み出したというより、これは計算された戦略のひとつなのではないか。浮気と諍いと後悔、回想される心変わりの気配や破局後の孤独を丹念に描く楽曲群は、軽快でありながらどこか悩ましく、陰鬱としている。一編のアルバム作品としてテーマを絞り込み徹底的に構築されたからこそ、チャーリー・プースの底力を示す見事なポップ・アルバム。(小池宏和)



『ヴォイスノーツ』の詳細はWarner Music Japanの公式サイトをご確認下さい。

チャーリー・プース『ヴォイスノーツ』のディスク・レビューは現在発売中の「ロッキング・オン」7月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。


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