武装するガールズ・ポップ

グライムス『ウィー・アプリシエイト・パワー(feat. ハナ)』
発売中
SINGLE
グライムス ウィー・アプリシエイト・パワー(feat. ハナ)

ピッタリとしたボディスーツに身を包み、『エイリアン』を思わせる宇宙船のなかで無表情のままこちらに銃を向ける……。ミュージック・ビデオでの挑発的な姿が端的に示しているが、グライムス、新モード宣言である。オリジナルとしては15年の『アート・エンジェルズ』以来の新作からの先行シングルだ。長らく共同作業をしてきたシンガー・ソングライターHANAをフィーチャーし、ハード・ロックを思わせる歪ひずんだギター・リフにインダストリアルなビートで高圧的に畳みかけていくアンセミックなキラー・チューン。ほとんど90年代のナイン・インチ・ネイルズのようなアグレッシブなサウンドで、“オブリビオン”に代表されるチャーミングなエレクトロ・ポップとはかなり距離がある。なんでも「AIマシーンによるガールズ・グループが演奏するプロパガンダ・ソング」だそうで、昨今トレンドのSF的なビジョンをグライムス流DIYポップと接続したものとなっている。北朝鮮のガールズ・グループである牡丹峰楽団からインスパイアされているというが、そこには何やら鼓舞的で昂揚的なメッセージが見え隠れする。

女性のエンパワーメントを祝福したジャネール・モネイの“ピンク”にグライムスは参加していたが、察するにこのシュールだが威風堂々とした態度は近年のフェミニズムのムーブメントと同調するものだろう。それをギーク・カルチャーの流行と結びつけるところに彼女らしいウィットが発揮されている。《人びとはわたしたちがおかしいと言いたいみたいだ》という歌詞はAIの発言として表現されているが、目覚めた女性たちからの声としても読める。そしてエキセントリック・ガールのアイコンとしてのグライムスは言う。力を讃えよ!(木津毅)



『ウィー・アプリシエイト・パワー(feat. ハナ)』の各視聴リンクはこちら

グライムス『ウィー・アプリシエイト・パワー(feat. ハナ)』のディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。
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グライムス ウィー・アプリシエイト・パワー(feat. ハナ) - 『rockin'on』2019年2月号『rockin'on』2019年2月号
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