時代を「描く」から「動かす」へ

Eve『おとぎ』
2019年02月06日発売
ALBUM
Eve おとぎ
“ドラマツルギー”、“お気に召すまま”などの楽曲で叩き出した驚異の動画再生数も、インディーズチャート1位&iTunes2位を記録した前作『文化』も、今この時代を鳴らす次世代ポップアイコンとしてのEveの存在感を十分すぎるほどに物語るものだった。が、そんな展開すらもほんの序章に過ぎなかった――ということを、最新作『おとぎ』は厳然と告げている。“トーキョーゲットー”、“アウトサイダー”をはじめ、バンドアレンジを緻密に批評し再構築した清冽かつスリリングなサウンドスケープは、今作においてますます輝度と透度を増しているし、その音空間に響くEveの歌声はよりいっそうポップな飛翔力を獲得している。そして何より、時代と/僕らとの切実なる共犯関係を突き上げる“僕らまだアンダーグラウンド”、混沌とした風景の中になけなしの希望の光を差し出す“君に世界”の2曲は、時代を「描く」筆致から「突き動かす」ダイナミズムへとEveの情熱のフォーカスが動きつつあることを伝えている。シーンの壁も枠組みも瓦解させ魔法のような予感に満ちた、2019年を語る上で欠かせない名盤。(高橋智樹)
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