インスピレーションの源

ザ・コメット・イズ・カミング『トラスト・イン・ザ・ライフフォース・オブ・ザ・ディープ・ミステリー』
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ALBUM
ザ・コメット・イズ・カミング トラスト・イン・ザ・ライフフォース・オブ・ザ・ディープ・ミステリー

ザ・コメット・イズ・カミングはロンドン発のシンセサイザー、サックス、ドラムスという変則3人編成のジャズ・インスト・バンド。2013年に結成、2015年にEPデビュー、2016年にファースト・アルバム『チャンネル・ザ・スピリッツ』をリリースして絶賛され、セカンド・アルバムである今作はついに名門〈インパルス〉に移籍してのメジャー・デビューだ。プロデュースとアレンジ、ミックスはメンバーのダナログ (Syn)とベータマックス(Ds)が手がけており、この2人はサッカー96というエレクトロニカ〜シンセ・ポップのユニットもやっている。もう1人のメンバーであるジャズ畑のサックス奏者シャバカ・ハッチングスがそこに加わり、よりジャズ〜即興色が強いザ・コメット・イズ・カミングができたわけだ。

コズミックな立体的音響にサイケデリックでヒプノティックなエフェクトが飛び交い、ファンキーでトライバルなビートとフリーキーなサックスのブロウが音楽全体を力強くリードしていく。今作では演奏もサウンドもさらに骨太に、パワフルになり、アレンジもシンプルになって、繊細でスペイシーな浮遊感とダイナミックに渦巻く攻撃的エネルギーが矛盾なく同居し、よりスケールの大きな音世界を展開している。独自の宇宙哲学で知られる異端のジャズ音楽家サン・ラの影響を公言するように、ある種のスピリチュアリズムをまとっているバンドだが、その音は力強く硬質で、かつ柔軟であり、悪い意味でのドグマとは無縁だ。ジャズにとどまらずベース・ミュージックやダブ、ヒップホップ、アフリカまで浸食していく音楽性の広さは、サン・ラの音楽の表面ではなく本質を捉えた結果だと思える。インスピレーションの源のような豊かな音楽だ。 (小野島大)



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ザ・コメット・イズ・カミング トラスト・イン・ザ・ライフフォース・オブ・ザ・ディープ・ミステリー - 『rockin'on』2019年4月号『rockin'on』2019年4月号
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