底辺からの一斉蜂起

ファット・ホワイト・ファミリー『サーフス・アップ!』
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ALBUM
ファット・ホワイト・ファミリー サーフス・アップ!

ファット・ホワイト・ファミリーこそが2010年代のUKロックの裏の顔(表はもちろんThe 1975だ)になるだろうことは、6年前のデビュー当時から分かっていた。彼らがいなかったら、恐らくシェイムもアイドルズも生まれなかったろう。その事実を決定付けて、世に知らしめるアルバムが、ここにきてようやく誕生。サウス・ロンドンからシェフィールドへ拠点を移し、バンドを崩壊の危機に陥れた悪癖を断って、ドミノへ移籍。心機一転、過去2作品が仄めかしていたポテンシャルを、全うするに至ったのだ。

何かが明らかに変わったことを物語る先行シングル“フィート”の予告通り、彼らはまずローファイなサウンドを封印。エレクトロニックに寄って、音質を磨き上げて引き締め、より明瞭な言葉を発し、“フィート”のディスコを始め、オールドスクール・ヒップホップやクラウトロックから借りた、ファンキーなグルーヴで多くの曲を貫いた。かつ、時にサイケデリックな、時にバロックなテイストで作り込んだ異形の折衷ポップで驚かせ、ソフト・ロックに挑む“ヴァジャイナ・デンタータ”でサックス・ソロが聴こえてきた時には、もう笑うしかない。美と醜の“醜”を専ら追求していたバンドが、“美”も掘り下げることで、結果的にいっそう“醜”を際立たせているようなところがある。毒を飲みやすくした、とも言えるのだろうか。何しろ、ビーチ・ボーイズの名盤に因んだらしきタイトルをよくよく見ると、“Surf”ではなく“Serf”と綴られている。“農奴”を指す言葉だ。

つまり本質は変わっていない。抑圧され搾取される人間を代表するアウトサイダー集団は、世界の歪みと混沌を切り取っているだけ。社会の底辺から改めて蜂起する彼らを、信じて待っていて本当に良かった。 (新谷洋子)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』5月号に掲載中です。
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ファット・ホワイト・ファミリー サーフス・アップ! - 『rockin'on』2019年5月号『rockin'on』2019年5月号
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