凍てついた心を包む福音

スピッツ『優しいあの子』
発売中
SINGLE
スピッツ 優しいあの子
すでにNHK連続テレビ小説『なつぞら』主題歌としてお馴染みの表題曲“優しいあの子”に関して、ドラマの舞台=北海道・十勝を何度も訪れたという草野マサムネが「『なつぞら』は厳しい冬を経て、みんなで待ちに待った夏の空、という解釈です」とコメントを寄せていたのが印象的だった。軽やかに跳ね回るようなビート感、凛と澄み切った空気感を想起させるギターサウンドとともに《氷を散らす風すら 味方にもできるんだなあ》《口にする度に泣けるほど 憧れて砕かれて/消えかけた火を胸に抱き たどり着いたコタン》と儚いセンチメントの揺らぎに形を与える草野の歌声――。日々の中で凍てついた心をやわらかく温めるその音楽は、ドラマでもファンタジーでもなく、今ここで生きる僕らにこそ降り注ぐ至上のポップの福音だ。

シングルとしては『みなと』以来実に3年2ヶ月ぶりとなる今作。“優しいあの子”の神秘的なまでの透度と美しさも、カップリング曲“悪役”の腕白な疾走感に満ちたロック感も、アルバム『醒めない』の後なおも磨き抜かれた「今」の輝度と滋味を物語っている。(高橋智樹)
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