新境地へと達した音世界と歌世界

ティコ『ウェザー』
発売中
ALBUM
ティコ ウェザー

今夏のフジロックへの出演も決定しているサンフランシスコのエレクトロニック・プロジェクト、ティコ。本作は3年ぶりとなる5枚目のニュー・アルバムで、新たに契約した〈Ninja Tune〉からのデビュー作になる。

2000年代の初頭にエレクトロニカの気鋭として頭角を現し、2010年代を迎えて以降はチルウェイブやインディR&Bも背景に独自のサウンドを作り上げてきたティコ。とりわけ近作においては、生楽器やバンド的な構成を取り入れることでエレクトロニックとオーガニックの融合が推し進められてきたわけだが、今作ではそこに新たなピースが加えられている。それは「ボーカル」で、女性ミュージシャンのセイント・シナーことハンナ・コットレルの歌声がフィーチャーされているのが特徴。音数やレイヤーを操り鮮やかな響きを奏でる音世界と、アンニュイで湿り気を帯びた陰りも魅力の歌世界とが、ここでは見事な共演を見せている。

リード曲の“ピンク&ブルー”を始めダンス・フィール際立つシンセ・ポップから、“スケート”や“フォー・ハウ・ロング”など柔らかな生音が映えるダウンテンポまで。本編は、全8曲・30分弱とコンパクトなサイズながら多彩に広がるサウンド・メイクを、ダンスフロアとアンビエントを行き来するようなコットレルの歌声が引き立てている。「彼女の歌声は僕に新たな世界を開いてくれた」とはティコことスコット・ハンセン本人の弁だが、今作は文字どおり新境地を告げると同時に、電子音楽と人間的な部分との融合という意味では必然的な帰結――とも言えるアルバムなのだろう。挟まれたインスト曲とのコントラストも作品に奥行きを与えており、改めてそのエレクトロニック・アーティストとしての非凡な作家性を再確認できる一枚だ。 (天井潤之介)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
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ティコ ウェザー - 『rockin'on』 2019年8月号『rockin'on』 2019年8月号
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