本性を見せた破格の才能

リゾ『コズ・アイ・ラヴ・ユー』
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ALBUM
リゾ コズ・アイ・ラヴ・ユー

19年のベスト・ソングの1曲だと確信している、エイティーズ・ファンク・リバイバルな先行シングル“ジュース”を初めて聴いた時、「リゾってあのリゾ? こんなに歌う人だっけ?」と耳を疑ったのを覚えている。それは確かに、6年前に傑作『Lizzobangers』でデビューした、ミネアポリスを拠点とするインディ・ラッパー、リゾことメリッサ・ジェファーソンにほかならなかった。15年の前作でボーカルの割合を少し増やしていた彼女は、このサードに至って、大胆に歌に比重を移してメジャー移籍。冒頭の表題曲では、まさに長い間押さえ込んでいたものを迸らせたかのような恐るべき声量で愛を叫び、モード・チェンジを印象付ける。よくまあ、こんな武器を今まで隠しおおせたものだ。

プロデューサーには、R&B系のオーク・フェルダーやロック・バンドのX・アンバサダーズ、ポップ畑のリッキー・リードらを起用。カラフルな音を隙間なく詰め込んで、ソウルやドゥーワップやファンクをリゾ色に染め上げたレトロ趣味なサウンドは、ただでさえニコニコ手招きしている彼女の歌に、さらなる愛嬌を与えるばかり。旺盛なユーモアと放送禁止用語の量は以前から変わっていないが、一気に敷居を低くして、メインストリームになだれ込んだ形だ。なんでも、「アレサ・フランクリンがラップ・アルバムを作ったら?」という設定の作品だそうで、そう聴けば分かりやすいのかもしれない。なぜってリゾのメッセージは、R-E-S-P-E-C-Tの一言に尽きる。自分を愛することから全ては始まるのだ―と。

そんなポジティビティとエクストリームなエモーションを全開にしたまま、お馴染みのフルート・ソロも随所で披露しながら突っ走る彼女。とにかく、ジャケットが想像させる通りのアルバムである。 (新谷洋子)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
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リゾ コズ・アイ・ラヴ・ユー - 『rockin'on』 2019年8月号『rockin'on』 2019年8月号
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