これこそが王道という自負

スケプタ『イグノランス・イズ・ブリス』
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ALBUM
スケプタ イグノランス・イズ・ブリス

The 1975デヴィッド・ボウイを抑えマーキュリー・プライズを受賞した『Konnichiwa』から3年、UKグライムの雄スケプタの5作目だ。

前作後はエイサップ・ロッキーとのコラボ“Praise the Lord (DaShine)”をヒットさせ、ゴールディーとのコラボを実現、ディジー・ラスカルミック・ジャガーなど数多くの客演を果たす等、八面六臂の活躍を見せ、自己のプレゼンスを着実に高める一方、若手のフック・アップにも熱心で、UKヒップホップ〜グライムのリーダーとしての自覚や行動も目立つようになってきた。

前作から引き続き参加しているノース・ロンドンのプロデューサー、ラグス・オリジネイルを始め4人の共同プロデューサーが名を連ね、ゲストも何人か参加しているが、作曲を含め、ほぼスケプタひとりで作り上げたアルバムと言っていいだろう。

サウンド面では前作の成功を踏襲し、さらに強化・深化を図ったアルバムと言える。オーセンティックなグライムにトラップの要素を加え折衷したようなトラックはスケプタ独自のものだが、より研ぎ澄まされたものになっている。前作よりも重厚で堅牢、隙のないトラックは、前作同様、ヒリヒリとした緊張感を感じさせるテンションの高いもので、これといって目新しい試みがあるわけではないが、これこそが王道という自信と力強さが漲っている。自分の身の回りの出来事や経験、心情を、高いストーリーテリング力とリリカルな表現で紡いでいくリリックも含め、スケプタのスタイルが完全に確立したことを感じさせる。

「無知は至福」というアルバム・タイトルは様々な解釈が可能だが、トップに立った(立ってしまった)者ゆえの苦悩や葛藤もそこには刻まれている。怖いもの知らずだった頃には戻れない、ということだ。 (小野島大)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
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スケプタ イグノランス・イズ・ブリス - 『rockin'on』 2019年8月号『rockin'on』 2019年8月号
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