際物ではない恐るべき才能

リル・ナズ・X『セヴン』
発売中
EP
リル・ナズ・X セヴン

昨年末にリリースされ、現在19週連続でアメリカのシングル・チャート1位を続けているリル・ナズ・Xの“オールド・タウン・ロード”。もちろん、これはヒップホップとしてだけではなく、すでにポップ・ミュージックとしての記録更新となっていて、今年最大の事件のひとつだ。特に話題になったのは、「オールド・タウン・ロード」というひなびたイメージのタイトルと馬を連れているという歌詞がどこまでもカントリー的なところだが、実は音と楽曲としては完全なトラップ・ビート。そこに乗せるあまりにもキャッチーなメロディと、絡めたラップの気持ちよさはまさにポスト・マローン的でもあるが、よりエッジのきいたブルース感がこのリル・ナズ・Xの魅力なのだ。これはまさしくまた現象が起きているといっていい。

このEPは“オールド・タウン・ロード”のヒットの勢いに乗って制作された作品で、ほかに6曲収録したもの。“オールド・タウン・ロード”のカントリー&ウェスタンのイメージを再起用し、カーディ・Bの客演がどこまでも強力な“ロデオ”もあるが、ほかはこの「カントリー・ラップ」とは関係ない、自身の現時点のトラックの数々となっている。たとえば“パニーニ”などは基本はトラップ・ビートながら、コーラスでは厚くアタックをかけていく聴き応えのある音で、かつて支えてくれていた人たちが自分の成功を見て掌を返していくさまを綴っており、まさに今現在のリル・ナズ・Xの心象のドキュメントとなっている。さらにブリンク182のトラヴィス・バーカーをプロデューサーに迎えたエレクトロ・ロック・サウンドの“ファミリー”などは家族をめぐる自身の切ない思いを窺わせる楽曲となっていて、まだまだ吐き出していくべきテーマがたくさんあることを予感させる。そうした意味でとても重要な一枚。 (高見展)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。
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リル・ナズ・X セヴン - 『rockin'on』2019年9月号『rockin'on』2019年9月号
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