天使の翼と、フューチャー・ベース

イレニアム『アセンド』
発売中
ALBUM
イレニアム アセンド

イレニアムは、米国デンバーを拠点に活動する、28歳のDJ/プロデューサーである。10代からEDMにハマり、本格的に音楽制作を開始したのは2012年。でも、ちょうどその年、彼はヘロインの過剰摂取で死にかけた経験もしている。EDMの曲作りに打ち込むことは、イレニアムにとって、ドラッグ中毒の闇から脱け出すための「光」であったのかもしれない。

そんな体験をくぐり抜けてきたからか、イレニアムの音楽は誠実で、エモである。ジャンル的には「歌モノ」のEDMポップで、より具体的には「メロディックなフューチャー・ベース」という紹介になるのだろう。でも、決して流行りの型に乗っかっているだけの人ではない。

本作『Ascend』は、イレニアムにとって通算3枚目となる新作アルバム。8月16日にリリースされ、すでに過去最大のヒットを記録している。自らのドラッグ中毒の体験を反映させた“Take You Down”、悲しみの失恋アンセム“Good Things Fall Apart”など、収録された全17曲は、いずれもビッグ・スケールなEDMでありながら、同時に、自分のためだけに奏でられているようなパーソナルな空間性も備えている。ザ・チェインスモーカーズやX・アンバサダーズといった大物とのコラボ曲がある一方、まだどのメジャー・レーベルとも契約してない無名のボーカルも起用していたり、“Angel (Lonely Prelude)”では映画『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』でのロビン・ウィリアムズの台詞(あのマット・デイモンとの伝説のベンチのシーン!)をサンプリングしてるあたりも、本当にこの人らしい。真冬の寒さと勇敢に戦う1枚のけなげな毛布のように、あなたの心の奥の奥の奥の方へ温もりを届けてくれる、そんなEDMアルバム。 (内瀬戸久司)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。
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イレニアム アセンド - 『rockin'on』2019年11月号『rockin'on』2019年11月号
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