最後期の輝きがここに

ニルヴァーナ『ライヴ・アンド・ラウド』
発売中
ALBUM
ニルヴァーナ ライヴ・アンド・ラウド

カートが亡くなって今年で四半世紀(遠い目)という意味合いもあってか、4月の『ライヴ・アット・パラマウント』に続き、『ライヴ・アンド・ラウド』が初アナログ盤化された。ニルヴァーナは実質7年しか活動していないが、これまでに『ライヴ!トゥナイト!ソールド・アウト!』、『MTV アンプラグド・イン・ニューヨーク』、『フロム・ザ・マディ・バンクス・オブ・ウィッシュカー』、『〜アット・レディング』、『〜アット・パラマウント』、そして本作と公式ライブ作品が発売されている。複数の公演からの音源をベスト・ライブ的に監修した『マディ・バンクス』以外は、基本的に映像作品であり、DVDと合わせた形のオリジナル・リリース時には、どうしても映像主体で見てしまうところがあった。まして『パラマウント』は『ネヴァーマインド』、『ライヴ・アンド・ラウド』は『イン・ユーテロ』のスーパー・デラックス・エディションの一部だったので、言葉は悪いが、初出時はどうしてもオマケ感がついてしまっていたように思う。一方、先にCDだけで出た『アンプラグド』は、映像が作品化されるまで、ずっとその音に集中して聴き続ける時間を持てた。こうして今回ヴァイナルになったことで、本作も音楽そのものに耳を傾ける良い機会となるのではないだろうか。

ここに収められているのは、93年12月、ニルヴァーナとしては最後期の演奏になる。その後に起きたことを考えるまでもなく、バンドの状態は決して絶好調とは言い切れない部分もあったはずだ。しかし、安定剤としてのパット・スメアを加入させたこともあり、MTV用に収録されたパフォーマンスは、あらためて向き合うと、非常に充実したものだったことが実感できる。それほど変わらないじゃないかと思っていた(失礼!)パットの存在、左右に分かれたギター2本のサウンドが今さらのように新鮮に響く。“ハート・シェイプト・ボックス”などにおけるバック・ボーカルなども同様だ。

タイトルに表れている通り、直前に行なわれた『アンプラグド』と対比をつけてバンド本来の爆音を強調したようなところも感じさせつつ、引き続きロリ・ゴールドストンのチェロをフィーチャーしているし、『アンプラグド』より力が漲った“ザ・マン・フー・ソールド・ザ・ワールド”や“アバウト・ア・ガール”などでは、統合的に次なる領域を目指していた様子を確認できる。いわゆるグランジとしての到達点を示すのと同時に、このあとニルヴァーナはどういう新展開を見せていってくれただろうか……という気持ちを再燃させずにはいられない。 (鈴木喜之)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。
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ニルヴァーナ ライヴ・アンド・ラウド - 『rockin'on』2019年11月号『rockin'on』2019年11月号
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