大人は分かってくれない

ヤングブラッド『ジ・アンダーレイテッド・ユース』
発売中
EP
ヤングブラッド ジ・アンダーレイテッド・ユース

SNS時代の常として、目に見えないところでスターが育って、ある日突然大勢のファンを従えて姿を現すことが多々ある。Z世代のロック・スターと目されているヤングブラッドこと英国人のドミニク・ハドソン(22歳)がまさに好例で、昨年のファーストを経て早くも登場するこの6曲入りEPを聴く限り、本人も世代の代弁者役を積極的に引き受けているようだ。何しろタイトルはずばり、“見くびられた若者たち”。10年代の世界を舞台に、大人に理解されず、時代にそぐわない価値観を押し付けられる若者の苦悩を訴える。

ただロックと言ってもドミニクのスタイルは、往々にしてヒップホップに接近するミクスチャー・ロックの進化形。前作には音にも言葉にも随所に英国色が感じられたのだが、ここにきてかなりアメリカナイズされた印象を受ける。冒頭の“braindead!”では明らかにアークティック・モンキーズを意識する一方、“casual sabotage”はトラップでアップデートしたリンキン・パーク? 全米ロック・チャートでトップ10入りしたシングル“original me”はインダストリアル風味のルーザー・アンセムだったりして、その感性は大西洋の真ん中辺りを漂う。

歌詞で触れているのも、メンタルヘルスや表現の自由など、国境を越えて共有できるトピックばかり。シンプルなボキャブラリーで、いい意味で広く浅く同世代に訴求する彼には健全な野心が窺え、ハイペースに作品を送り出して聴き手を飽きさせないだけの、ジャンルレスなアイデアの貯えがありそうだ。

実際、本作のラストにもサプライズが待っていた。マイク・クロッシーがプロデュースした“waiting on the weekend”は、アコギで歌うローファイなラブ・ソング。ラウドな曲が続いた末にふと見せる無防備な表情に、伸び代を実感できた。 (新谷洋子)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。
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ヤングブラッド ジ・アンダーレイテッド・ユース - 『rockin'on』2019年12月号『rockin'on』2019年12月号
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